金属行人(11月8日付)

 地球温暖化対策の新しい枠組み「パリ協定」のルールづくりが今週、ドイツ・ボンでのCOP23で始まった。各国が表明した自主的な削減目標に対し、第三者の評価を通じて、削減の実効性を高めようというのがパリ協定。来年のCOP24に向けてそのルールをつくることになっている▼パリ協定をめぐっては、米国のトランプ政権が離脱方針を表明しており、米国の動向が注目されている。同国の代表はCOP23でも改めて離脱方針を表明。しかし、ルールづくりには関わっていくという。こうした米国の姿勢には各国から批判が相次いだようだ▼パリ協定には「2度目標」と呼ばれる長期目標が盛り込まれており、各国は自国の長期目標を2020年までに提出することになっている。日本は「50年度までに13年度比80%減」という目標を掲げているが国連へは未提出だ▼「80%削減」は既存の技術では達成が難しいとされる。経済産業省も環境と経済の両立が基本で、あくまでも「目指すべきビジョン」とする。しかし80%が独り歩きすると「あらゆる政策手段を……」という声も大きくなりがち。いわゆるカーボン・プライシングの導入議論だ。負担の公平性、実効性などから鉄鋼業界はこの仕組みに懐疑的だ。COPでもこの問題は特に浮上していない。慎重な検討が必要だろう。

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