「妻の寝つきが悪いと夫婦げんかが増える」
カップルが同じベッドで眠ると、良いこともあれば悪いこともあります。就寝時刻や起床時刻、寝室の室温や明るさの好みが違えば、片方の人の睡眠が犠牲になります。また、寒い冬には布団の争奪戦に負けてしまった方が、風邪をひいてしまうかもしれません。
そして夫婦げんかのしやすさも、睡眠の状態と関係があるようです。ピッツバーグ大学・精神科のウェンディ・トロクセル教授の研究によると、寝つくまでに時間がかかった妻は、その翌日における結婚生活上の不調が多くなり、夫も同様に不調を訴える傾向が強くなっていました。
これはつまり、妻の寝つきが悪かった翌日は、夫婦げんかが起きやすいということです。
睡眠不足のときは、脳内物質の一つである「セロトニン」が減ってしまいます。セロトニンは精神を安定させる働きがあるので、セロトニンが不足すると、気持ちがいら立ってキレやすくなります。こういう理由から、妻の寝つきが悪かった翌日は、夫婦げんかのリスクが高まるものと考えられます。
セロトニンを増やすには、ウォーキングなどのリズム運動や日光浴が効果的です。ガムをかんだり歌を歌ったりしても、セロトニンが増えて気持ちが落ち着きます。グルーミングでもセロトニンが増えるので、夫婦でマッサージしあうこともお勧めです。
夫婦・恋人が一緒に眠るメリットは? 気持ちの落ち着きに効果
もちろん、カップルで一緒に眠ることの利点も、たくさんあります。
ウェンディ・トロクセル教授が行った別の調査では、パートナーと安定した関係を長く保っている女性は、独身女性やパートナーと別れた女性よりも、寝つきが良く、夜中に目を覚ましにくいことが分かりました。
これは、パートナーと眠ることで安心感が得られ、「コルチゾール」などのストレス・ホルモンの分泌が抑えられるためではないか、と考えられています。また、ベッドを共有することで、不安感を和らげるホルモンであるオキシトシンが増えます。ちなみに、オキシトシンは「ラブホルモン」とも呼ばれています。
寝室環境の好みや生活習慣の違いを逆手にとって、仲良くなる方法もあります。就寝や起床の時刻が違うのなら、相手を起こさないように寝床に出入りすれば良いのです。
自分の希望を主張するだけでなく、お互いの要望をすりあわせて、2人ともが質のよい睡眠をとれるようにゆずり合ってみましょう。相手を気づかうことがお互いの理解や愛情を深め、ますます夫婦円満となるに違いありません。
ベッドパートナーだから見つけられる病気もある
イビキや歯ぎしりを聞かされる方は迷惑ですが、大事なパートナーの病気を見つけるきっかけにもなります。
イビキだけならあまり問題はありませんが、ひどいイビキの後に呼吸が止まるようなら要注意です。睡眠中に窒息を繰り返す「睡眠時無呼吸症候群」という病気の可能性があります。こんなときは、太っている人なら減量を、仰向けで呼吸が止まるなら横向きで寝てみてください。それでもだめなら、早めに睡眠障害の専門医に相談しましょう。
隣で歯ぎしりをされると、気になって眠れないことがあります。歯ぎしりの主な原因の一つがストレスなので、最近、歯ぎしりが増えてきた人は、ストレスへの対処法を考える必要があります。
また、「胃食道逆流症」の患者さんは、胃酸の逆流が起こると酸を中和するために、歯ぎしりをして唾液を飲み込むことがあります。胸焼けもあるようなら、消化器科や内科の医師の診察をお勧めします。
これまで寝言を言わなかった人が急に言うようになったり、手足を動かしたり、眠りながら部屋を歩くようになったりした人は、「レム睡眠行動障害」という睡眠障害の可能性があります。レム睡眠行動障害では、夢で見ている通りに動いてしまいます。そのため、パートナーを傷つけたり、本人がケガをしたりして危険です。
疑わしいときは早めに、睡眠障害の診療を行っている医療機関を受診しましょう。