金属行人(11月9日付)

 今ではおなじみの「クラウドコンピューティング」という言葉が生まれたのは2006年8月のことだそうだ。当時米グーグルの最高経営責任者だったエリック・シュミット氏が会議で用いたのが最初という。ただ、それより前にこの技術の可能性に着目していた企業もあった。新日鉄住金ソリューションズはその1社だ▼研究所で実証実験を始めたのは「クラウド発言」前年の05年。07年に独自のクラウドサービス「アブソンヌ」を立ち上げ、先月で丸10年がたった。時流に先んじた故か、初めは「使えるわけがない」など提案先から厳しい声もあったという。今では大手企業を中心に顧客数は100を超す。一つ一つ信頼を重ねて迎えた節目だろう▼IT業界は好況だ。企業の経営や事業戦略に「攻めのIT」が求められていることが背景にある。「うちのIT部門は日々の業務に追われてまして」「それならITインフラと保守・運用は全面移管を引き受けましょう。身軽になったIT部門は戦略業務に専念できます」。そんな動きも本格化している▼この外注対応にも新日鉄住金ソリューションズは力を入れる。アブソンヌがあってこそなせる業という。単なるクラウドを超えた付加価値を、と幹部は言う。進化はまだまだ続きそうだ。

© 株式会社鉄鋼新聞社