旧江上小解体、景観整備へ 五島市・来年度にも着工

 五島市は来年の世界文化遺産登録を目指す「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を構成する同市奈留町の江上天主堂を中心とした江上集落について、集落にある旧町立江上小の廃校舎や体育館を解体し、景観整備する計画を進めている。市の来年度当初予算に計上し世界遺産登録後、集客に影響がないよう配慮して解体する方針。跡地に何を整備するかは有識者と協議を重ねていく。

 旧江上小は児童減少などで1998年に閉校。その後は地域のコミュニティーセンターと位置付けたが、閉校と同時に電気や水道も廃止されるなど利用実績はなかった。同天主堂が世界遺産候補として注目されて以降、校舎の利活用が検討されてきたが、2011年にグラウンドの一部に駐車場とトイレを新設する程度にとどまっていた。

 校舎は鉄筋コンクリート2階建てで、体育館なども含めて解体、整備する面積は7892平方メートル。老朽化も進み、信徒たちがひそかに暮らした集落の山の谷の景観が損なわれていることから、文化庁なども整備を促しているという。

 市によると、景観を重視するため、観光客ら向けの物販施設のようなものは考えていない。明治時代の集落の地籍図なども参考にして、学校開設前に田んぼだったかつての風景を再現するのかどうかなどを慎重に検討していくとしている。

 計画では世界遺産登録後に時期を見計らい、観光客の動線を確保しながら18年度中に解体。集落周辺への地元説明会も開き、今後、景観案を複数に絞り、19年度以降に跡地の整備に入る予定。

五島市奈留町の江上集落にある旧江上小の校舎と体育館(中央)。グラウンド右手の建物が江上天主堂(同市提供)

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