東芝、2018年3月期下期のフリーC/F マイナス4,700億円の見込み

 11月9日、(株)東芝(TSR企業コード:350323097、東証2部、東京都)は2018年3月期の第2四半期決算(連結)を発表した。東芝本社で15時からマスコミ向け会見、16時半からアナリスト向け決算説明会を開催した。

メモリ事業が好調で大幅増収

 会見、説明会とも代表執行役の平田政善専務ら経営幹部が出席した。
 2018年3月期4-9月業績は、メモリ事業が好調に推移し、売上高は2兆3,862億円(前年同期比5.0%増)だった。損益は、営業利益2,317億円(同148.6%増)を確保したが、メモリ事業の東芝メモリ(株)(TSR企業コード:023477687、東京都)への会社分割に伴う税額影響を盛り込んだため、当期純損益は497億円の赤字(前年同期は1,153億円の黒字)となった。
 メモリ事業は好調だったが、インフラシステムソリューション事業のビル・施設関連の受注について、平田専務は「GC(ゴーイングコンサーン)注記が付記されたことで取引先が社内規定から発注を控える動きもあり、受注できない案件があった」と述べ、財務悪化が受注活動に悪影響を及ぼしていることを認めた。

東芝連結1

上半期のフリーC/Fは876億円

 2018年3月期4-9月のフリーキャッシュフロー(C/F)は876億円のプラス(前年同期は1,485億円のマイナス)だった。ただ、7月のランディス・ギア(スイス)の株式売却がプラスに影響しており、これを除くと1,500億円程度の悪化となる。

下半期のフリーC/Fは▲4,700億円

 2018年3月期下半期(10-3月)のフリーC/Fはマイナス4,700億円と大幅悪化を見込んでいる。主な要因は、エネルギーシステムソリューション事業で、子会社だったウエスチングハウスグループ(以下、WH)のチャプター11(連邦破産法第11章、日本の民事再生法に相当)の申請による親会社保証の履行による1,200億円のキャッシュアウトを含むマイナス2,300億円。この他、カザトムプロム(カザフスタン)のプットオプション(株式売却権)の行使で600億円。財務体質の悪化で取引先から支払いの早期化を求められていることでも500億円を見込んでいる。
 こうしたキャッシュフローの見込みには、東芝メモリの売却は考慮されていない。

2018年3月末の自己資本は▲7,500億円

 東芝は2018年3月末までの東芝メモリの売却を目指している。すでに8カ国・国地域(ブラジル、中国、EU、日本、韓国、フィリピン、台湾、アメリカ)の当局へ独占禁止法にかかわる届出書を提出済みだ。
 期日までに東芝メモリを売却出来た場合、2018年3月末の自己資本は3,300億円のプラスとなり、債務超過が解消される。ただ、売却できない場合、マイナス7,500億円の大幅な債務超過で上場廃止となる。
 こうした最悪の事態に備え「今後の状況の変化に対応できるよう資本政策について様々な検討を行っている」(開示資料)とするが、具体的な検討内容は公表されなかった。
 東芝は、10月12日に東京証券取引所から特注及び監理銘柄の指定を解除された。説明会の出席者から今後の資本政策に関する質問が出たが、平田専務は「GC注記や限定付き適正意見もある。完全にあらゆるものがフリーに出来る状態にはない」と信用低下に伴う制約を暗に認めた。

WDとの係争の行方は

 ウエスタンデジタル(アメリカ、以下WD)との係争について、東芝から積極的なアナウンスはなされなかった。WDは、国際仲裁裁判所に東芝メモリの売却差し止めの仲裁を申し立てており、仲裁裁判所から暫定差し止めなどが出された場合、2018年3月末までに売却完了が出来なくなる可能性がある。

カギ握るWHの親会社保証の履行

 メモリ事業の東芝メモリへの会社分割では、2018年3月期通期で4,670億円の税金負担を見込んでいる。一方、WHのチャプター11申請で親会社保証の履行義務も負っており、これをすべて履行した場合、「4,000億円程度の(プラスの)税効果がある」(平田専務)。
 ただ、税効果はWHのチャプター11が終了(裁判所による再建計画の認可)し、親会社保証が履行されることが前提だ。
 しかし、平田専務は「チャプター11が3月末までに終了しなくても東芝が関与しなくなれば税効果を認識できる可能性がある。親会社保証を全額払えば税効果が生まれる可能性がある」と述べ、可能な限り早期に親会社保証を履行する考えを示した。
 東芝は、WHのチャプター11申請に伴い総額6,600億円の親会社保証を2022年までに履行しなければならい。2017年9月末のキャッシュ残高は5,126億円で、運転資金等を考えると現状では一括履行は難しい。

 今後、外部資金の導入などで6,600億円の支払いを全額履行できた場合、2018年3月末の株主資本は見込み値の7,500億円の債務超過から4,000億円程度の改善が見込まれる。外部資金の導入が銀行借入でなくエクイティで実施されると、その分の自己資本が引き上げられるため、東芝メモリの売却が2018年4月以降にずれ込んだとしても債務超過を解消できる可能性がある。

 東芝の上場維持に向けた動きは、各国の独占禁止法の審査の状況とWDとの係争の行方に加え、WHの親会社保証の履行時期にも注目することが必要だ。

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 (東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年11月13日号掲載予定「Weekly Topics」を再編集)

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