プラネタリウム“完全復活”へ 小田原の中学校

 小田原市立白山中学校(同市扇町)にあるプラネタリウムが“完全復活”する。投影機の寄贈を受けて建てられた施設は築50年で老朽化し、今春には市が解体を打診。だが「地域に愛される学校のシンボルを残そう」と、PTAが中心となって奔走し、地域住民らの寄付もあって大規模改修にこぎ着けた。11日に同校で開かれる上映会で、生まれ変わったその姿を披露する。

 同校本館の屋上に、ドーム型のプラネタリウムは設置されている。1967年の本館新築と創立20周年を祝い、篤志家の市民から投影機が寄贈され、創立20年事業推進委員会が地域や家庭から寄付を集めてドームを建設するなどした。

 当時はまだ珍しい体験型施設は理科の授業に活用されてきたが、時間の経過とともに老朽化。外壁のトタンはさび付き、天井からの雨漏りで内壁はひび割れ、木の床はめくれた。古い投影機を操作できる職員もいなくなり、プラネタリウムは徐々に使われなくなっていった。教頭(54)は「最近では、卒業アルバムに載せる集合写真のバックに使う程度だった」と明かす。

 プラネタリウムを復活させる契機となったのは、屋上の防水工事に伴い、市教育委員会が今春、同校に解体を打診したことだった。ただプラネタリウムを「学校のシンボル」と評する校長(57)と、同校PTAの会長(43)は存続を決めた。会長は「市教委も学校のことを考えて提案してくれた」と理解を示しつつ、「施設建設の経緯を考えると、子どもや学校に対する地域の気持ちの結晶のように感じ、残しておきたかった」と説明する。

 その結論を市教委も了承し、撤去の代わりに外装工事を実施。残された内装工事について、会長らが9月から地域で寄付を募ったところ、50を超える個人や団体、企業などから約60万円が集まった。会長は「不安いっぱいだったが、地域の方々がプラネタリウムをどれだけ気に掛けてくれていたかを感じ、ありがたかった」と喜ぶ。

 11日に開かれる「白山学区交流祭」で大規模改修後、初の上映会を開く。今回は投影機を借りるが、予想外に寄付が集まり、投影機を年度内に購入するめども立った。「残すことを認めてもらったからには、一日だけの復活ではなく、地域の子どもたちのためにも活用しなければ」と会長。学区内の小学生や地域の子どもたちにも、授業や地域のイベントで、「小さな天空ショー」を楽しんでもらいたい考えだ。

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