座間死体遺棄 若い命、願い届かず

◆人生回り始めた矢先… 「元気な顔で戻ってきてくれたらそれ以上のことはない」。横浜市都筑区の被害者(25)の母親(56)は身元判明前にそう願っていたが、思いはかなわなかった。

 行方が分からなくなったのは10月18日。昼食後、アルバイト先のコンビニへ向かったのを最後に連絡が取れなくなった。店長に問い合わせたが、通常通りに退勤したと聞いた。

 翌19日午前に県警へ行方不明者届を出してからも、音信は途絶えたまま。今月5日に警視庁から連絡を受けていた。

 被害者は、通信制の高校を卒業してから自宅で過ごすことが多くなったが、この春にアルバイトをスタート。週数日の勤務が半年以上続いた。

 同僚と会員制交流サイト(SNS)でやりとりするなど「後輩ができた」と喜んでいたという。母親は「人生が回り始めた矢先、なんでこんなことになったのか」とつぶやいた。◆音楽好きの優しい青年 横須賀市の男性(20)は音楽好きで、地元のバンドではベースを担当していた。県警によると、8月末に「渋谷のライブハウスに行く」と家族に告げて出掛けてから連絡が途絶えたという。

 その後、バンドの仲間はインターネットなどを通じて行方を捜し続けた。最後に居場所を特定できたのは座間市に隣接する海老名市だったと書き込み、「少しでも情報がありましたらご連絡よろしくお願いします」と呼び掛けていた。

 男性が昨年3月に卒業した横須賀市内の県立高校の関係者によると、入学後にバンド活動を始めたといい、「廊下ですれ違うと、ニコッと笑って元気にあいさつをしていたのを覚えている」と話す。

 男性は、市内の知的障害者支援施設に勤務。地元の音楽関係者の50代の男性は、「バンドマンは斜に構えたような子もいるけれど優しくていい青年だった」と振り返り、「本当に残念なこと」と声を震わせた。

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