綱引きの行方は

 1年前の衆院内閣委員会で唱えた般若心経が“珍質問”の代表格として繰り返し報道される事態を当の谷川センセイ、果たして想像できていたかどうか。もちろん、場違いな読経にも谷川氏なりの思いはあったのだろうから改めて論評はしないが▲国会での質問時間の割り当てを巡る与野党の攻防が続いている。先の衆院選で大勝した自民党は昨日、野党側に厚かったこれまでの配分を「5対5」に見直すよう提案した。野党は反発している。さて、綱引きの行方は▲衆院選の直後に「選挙は民意の地方予選」という考え方があることに少し触れた。現行の小選挙区比例代表並立制の下では、本来なら「比較第1党」程度のはずの自民党が圧倒的な多数を占める▲選挙制度の当否を巡る議論はひとまず措く。ただ、多様で複雑な民意が、選挙である程度加工され、集約された結果として議会の構成があることはいま一度、念を押しておきたい▲まして日本は多数党の党首が首相を務める議院内閣制。国会の審議で何より大切なのは、少数側の疑問や反対意見に政府が丁寧に応じ、説得と納得を目指す過程である▲議席数に応じて発言時間を配分せよ-という主張は、当たり前の要求のようで、実は正当性が乏しいことは指摘しておかねばならない。議論を注視したい。(智)

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