神戸製鋼の不適切行為で再発防止策、品質ガバナンス強化 「収益評価に偏った経営」原因

 神戸製鋼所は10日、アルミ・銅製品の品質データ書き換えなど一連の不適切行為について、原因究明と再発防止策に関する報告書をまとめ、発表した。報告書は、収益評価に偏った経営と閉鎖的な組織風土などが不適切行為の温床になったと分析。洗い出した複数の原因を踏まえた対策を講じ、再発防止につなげるとした。報告書はまた、アルミ・銅部門を中心に不適切行為が長年にわたり継続されたとし、「経営が問題として取り上げ、対応できていなかったこと自体が問題」と、経営の責任についても言及した。

経済産業省に報告書提出

 同日会見した川崎博也社長は「不適切行為の温床になった風土を払拭したい。不退転の覚悟で取り組む」と述べ再発防止に全力を挙げる考えを示した。

 川崎社長は会見に先立ち、経済産業省を訪れ、多田明弘製造産業局長に報告書を手渡した。多田局長は「外部調査委員会による報告を待ちたいが、今回の報告書は信頼回復に向けた一つのステップとして意味がある」と述べた。

 同日発表したのは社内に設置した「品質問題調査委員会」の報告。この問題では10月末に設置した外部委員のみで構成する「外部調査委員会」が調査を続けている。最終的な再発防止策は、年内をめどにまとめる同委員会の報告を踏まえて実施する。

 原因についてはこのほか、品質到達度などを考慮せずに生産・納期を優先する風土があったことや、異動が少なく担当者を固定化させた人事政策、データの改ざんを可能とする検査プロセスなどを挙げ、これらが「アルミ・銅部門で顕著だった」とした。組織体制については、アルミ・銅事業部門で品質保証部署の独立性が確保できていなかったことなどを挙げた。

 再発防止策ではガバナンスの強化策など打ち出した。同日、取締役の諮問機関として、川崎社長や社外取締役、担当役員で構成する「品質ガバナンス再構築検討委員会」の設置を決めたほか、品質管理のチェック機能を強化するため、来年1月に「品質監査部(仮称)」を設置する方針を示した。また不適切事案が多かったアルミ・銅事業部門では、事業部直轄の品質保証部を設け、事業所に任せていた品質管理を本社で一括して行う体制に改める。

 鉄鋼事業部門などでは既に、日本鉄鋼連盟のガイドラインに沿った保証体制を構築済み。これに沿った保証体制を全事業部やグループ会社に展開する方針も打ち出した。

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