「WHIP」で見る投手の安定感…菅野が圧倒、阪神救援も納得の数値【セ編】

広島・中崎翔太【写真:荒川祐史】

菅野は西武・菊池を超えて両リーグ先発でトップ

 今季NPBの大きなイベントと言えば、11月20日に開催される「NPB AWARDS」のみとなった。各タイトルは決まっているが、ここでは改めて今季の投手陣について振り返りたい。

 投手の能力を示す数値の中に、WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)というものがある。投手が1イニング平均で与四球+被安打で許した走者数を示したものだ。大前提として、投手は託されたイニングを無失点で終えることを目指す。そのためには走者を出さないことが重要だ。投手の安定感を示す数値でもあるWHIPは、MLBでは公式記録になっているが、NPBでは導入されていない。

 セ・リーグで規定投球回数以上に達した投手をWHIP順に並べた。

菅野智之(巨)0.85(25試17勝5敗 187.1回 防御率1.59)
マイコラス(巨)0.98(27試14勝8敗 188回 防御率2.25)
秋山拓巳(神)1.09(25試12勝6敗 159.1回 防御率2.99)
今永昇太(De)1.13(24試11勝7敗 148回 防御率2.98)
田口麗斗(巨)1.219(26試13勝4敗 170.2回 防御率3.01)
野村祐輔(広)1.223(25試9勝5敗 155.1回 防御率2.78)
メッセンジャー(神)1.24(22試11勝5敗 143回 防御率2.39)
井納翔一(De)1.267(25試6勝10敗 152.1回 防御率3.84)
バルデス(中)1.274(23試6勝9敗 146回 防御率3.76)
大瀬良大地(広)1.28(24試10勝2敗 145.2回 防御率3.65)
大野雄大(中)1.31(24試7勝8敗 147.2回 防御率4.02)
ブキャナン(ヤ)1.34(25試6勝13敗 159.2回 防御率3.66)

 菅野は菊池雄星(西武)の0.91を下回るWHIP0.85で、先発投手の中で最も優秀だった。この安定感をもってすれば、沢村賞受賞も当然だ。続いて2位は同じ巨人のマイコラス。両右腕がWHIPではセの先発投手ツートップだったのだ。

 阪神の右腕・秋山は、昨年のWHIPが1.25だったのに対し、今季は1.09に向上。背負う走者の数が減ったことが成績急上昇につながったと言えそうだ。

 今季勝率1位に輝いた広島の大瀬良はWHIPが1.28だったが、これは優秀とは言えない。防御率3.65も平均並み。負けなかった、という事実は大きいが、運と味方の援護に助けられてのタイトル獲得だということになるだろう。

阪神をリーグ2位に押し上げた救援陣の働きが如実に表れる

 続いて、50試合以上投げた救援投手のWHIPも見ていこう。

高橋聡文(神)0.90(61試6勝0敗1S20H 47.2回 防御率1.70)
中崎翔太(広)0.92(59試4勝1敗10S25H 57.2回 防御率1.40)
桑原謙太朗(神)0.94(67試4勝2敗0S39H 65.2回 防御率1.51)
山崎康晃(De)0.99(68試4勝2敗26S15H 65.2回 防御率1.64)
ジャクソン(広)1.00(60試2勝2敗1S30H 62回 防御率2.03)
マシソン(巨)1.02(59試4勝4敗2S27H 68.1回 防御率2.24)
田島慎二(中)1.04(63試2勝5敗34S6H 62.2回 防御率2.87)
一岡竜司(広)1.06(59試6勝2敗1S19H 58.1回 防御率1.85)
又吉克樹(中)1.09(50試8勝3敗0S21H 110回 防御率2.13)
ドリス(神)1.11(63試4勝4敗37S5H 63回 防御率2.71)
マテオ(神)1.12(63試7勝4敗0S36H 59回 防御率2.75)
パットン(De)1.15(62試4勝3敗7S27H 60回 防御率2.70)
藤川球児(神)1.15(52試3勝0敗0S6H 56.2回 防御率2.22)
近藤一樹(ヤ)1.19(54試2勝4敗1S14H 55.1回 防御率4.72)
ルーキ(ヤ)1.20(61試4勝67S22H 60.2回 防御率2.97)
中田廉(広)1.22(53試2勝4敗0S13H 46.2回 防御率2.70)
砂田毅樹(De)1.23(62試1勝2敗0S25H 54.2回 防御率4.12)
今村猛(広)1.24(68試3勝5敗23S17H 64.1回 防御率2.38)
三上朋也(De)1.24(61試3勝3敗0S31H 51回 防御率5.12)
カミネロ(巨)1.25(57試3勝5敗29S4H 63.1回 防御率2.42)
岩崎優(神)1.26(66試4勝1敗0S15H 71.2回 防御率2.39)
田中健二朗(De)1.37(60試1勝3敗0S11H 48.1回 防御率4.47)
岩瀬仁紀(中)1.43(50試3勝6敗2S26H 35.2回 防御率4.79)
石山泰稚(ヤ)1.74(66試3勝6敗0S24H 68.1回 防御率3.03)

 阪神の高橋聡文が1位、桑原謙太郎が3位にランクイン。阪神がリーグ2位になった最大の要因は、優秀な救援投手陣だった。その中で、どうしてもマテオ、ドリスの両外国人投手に注目が集まりがちだが、先発と抑えの間を埋めた高橋、桑原の安定感ある投球がカギだったことが分かる。

 2位の広島・中崎はシーズン途中に故障で離脱し、一時期今村にクローザーの役割を託していたが、復帰後は安定感ある投球を見せた。

 サファテに更新されるまでNPBセーブ記録を持っていた岩瀬は、今季26ホールドを挙げて復活したが、WHIPは1.43。特に夏以降は走者を出して、苦しいマウンドが続いた。元々走者を出しながらも抑える救援投手ではあるが、全盛期の2006年にはWHIPは0.87だった。やはり往年の投球が戻ってきたとは言い難いだろう。

 WHIPという指標を使えば、勝ち星、セーブ、ホールドといった成績では計れない、投手の安定感が見えてくる。投手をいろいろな角度から評価する上で、有効な指標と言えるだろう。

(Full-Count編集部)

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