「開門せず基金」に全力

 国営諫早湾干拓事業の開門調査問題で、斎藤健農相は13日、長崎、佐賀両県を訪れ、諫早市の中央干拓地などを視察した。開門差し止めを命じた4月の長崎地裁判決に国が控訴せず、100億円の漁業振興基金で解決を目指す方針を示して以降、農相の現地入りは初めて。斎藤農相は本県関係者を前に「開門によらず基金での和解に理解が得られるように全力を注ぐことに尽きる」と述べた。

 斎藤農相は同市高来町の諫早湾干拓堤防管理事務所で、本県の中村法道知事や営農者、漁業者らと面会。中村知事は国の「非開門」方針に感謝の意を伝え、「残されたさまざまな訴訟で、しっかり主張、立証を重ね、開門問題の早期解決を図ってほしい」と要望した。

 その後、斎藤農相は佐賀県の山口祥義知事と共に、有明海のノリ養殖場や赤潮の発生状況などを海上から視察。佐賀市内で漁業者らを交えて意見交換し、有明海再生事業について「関係者と協力して前進させたい」と強調した。一方、山口知事から開門を求める踏み込んだ発言はなかった。

 山口知事は終了後、佐賀県庁で取材に応じ、「有明海の現状を見てもらう目的だったため、開門調査問題に言及するのは控えたが、漁業不振の原因を究明するための開門調査は必要」とした。

© 株式会社長崎新聞社