北朝鮮鉱山、密輸で活路を見出そうとするも虫の息

中国商務省は昨年4月と今年8月、国連安保理の制裁決議2371号を受けて北朝鮮産の鉄、鉄鉱石などの輸入を禁止する措置を発表した。

中朝国境を流れる豆満江沿いにある咸鏡北道(ハムギョンブクト)の茂山(ムサン)鉱山は、生産した鉄鉱石を大々的に中国に輸出してきたが、それができなくなってしまった。北朝鮮当局はあの手この手を使って輸出を行おうとしているが、うまく行っているとは言えない状況だ。

現地の情報筋が米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に語ったところによると、鉄鉱石の輸出で儲けてきた貿易会社や外貨稼ぎ機関の幹部は最近、足繁く中国に通い、なんとか販路を開拓しようと必死になっているという。

軍需産業と密接な関わりがある清津(チョンジン)の金策(キムチェク)製鉄連合企業所の傘下にあるこの鉱山は、貿易会社や外貨稼ぎ機関を通じて鉄鉱石を中国に輸出してきた。

軍傘下の大聖貿易、ホンソン貿易、咸鏡北道の新興貿易は昨年末まで鉄鉱石精鉱を1日平均1000トン以上輸出。その対価として、平壌のタワーマンション団地である黎明(リョミョン)通りの建設など国家レベルの建設工事に使う建設資材、食糧、生活必需品をバーターで輸入していた。

経済制裁が始まった当初、北朝鮮当局は「制裁はそのうち緩和されるだろう」と宣伝し、貿易会社の幹部も「輸出できない状況は短期で終わるだろう」と見ていた。

ところが、国際社会の制裁は緩和されるどころか、強化されるばかりで、貿易会社や外貨稼ぎ機関は閉業を迫られる状況となった。

慌てた幹部たちは、販路を探して駆けずり回っているというわけだ。

夜中に保衛員(秘密警察)を動員して、鉄鉱石を中国に密輸出してはいるが、大型船を使うわけにもいかないため、量はたかが知れている。また、中国業者に足元を見られ、含有量40%の高純度鉄鉱石1トンを国際相場の約4分の1に過ぎない15ドル(約1700円)で買い叩かれている。

鉱山労働者たちはすでに昨年から、鉱山に見切りをつけ、地域を去っているという。

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