【トップインタビュー YKKAP・堀秀充社長】窓の断熱化さらに推進 改修・海外事業にも注力

――まずは足元の状況から。

 「上期の決算は増収増益だった。アルミ形材を外販する産業製品事業が好調だったほか、新築住宅関連の事業で高断熱窓の拡販が進んだ。またビル用の建材も堅調に推移した。ただ通期でみると原材料であるアルミ地金の価格が上がった影響が後半から出てくることなどもあり、今期は増収減益になると予測している」

――2020年度までの新中計を策定しましたが、市場についてはどのような見通しを。

YKKAP・堀社長

 「19年度までは消費増税前の駆け込みなどで需要は良いと思う。ただ20年度以降は増税後の反動減や東京五輪関連需要の終息に加え、少子高齢化などによる新築着工減で市場はかなり厳しくなるだろう。今期からスタートした新中期計画では新築関連で成果が出ている窓の高断熱化をさらに進めつつ、改修関連事業や海外事業を強化して環境変化に対応していく」

――窓の断熱化で進める取り組みは。

 「住まいの一次消費エネルギー収支をプラスマイナスゼロにするZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)の普及や断熱基準の義務化などで、今後窓を断熱化する需要が増える。当社は一般的なアルミ製の窓と同水準の価格で高断熱なアルミ・樹脂複合窓を供給できる。その防火タイプを10月から発売したので、防火品の需要がある都市圏などでさらに拡販したい。樹脂窓については11月に四国製造所でも生産を始める。今後は九州や広島でも製造できればと思っている。複合窓・樹脂窓を合わせた高断熱窓の比率は現在5割強だが20年度には8割に高める」

――改修関連の事業で注力する点は。

 「短時間で交換できる製品や工法を仕掛けており、戸建住宅向けではドアや内窓が上手くいっている。今後は集合住宅向けも伸ばしていきたい。集合住宅では便利さや室内の温かさなど使用価値のほか、資産価値を高める意味からも改修ニーズは大きい。また建築から年数が経ち改修適齢期となっている物件も多い。現在までに集合住宅用の改修商材もかなり充実してきたほか、マンションリフォーム会社のラクシーを買収した効果も出ている」

――海外市場ではどのような事業戦略を。

 「米国では製造拠点がある南東部を中心に事業を展開してきたがダラスに加工拠点を作り、ロサンゼルスやサンフランシスコなどに事務所を置いたので西部にも拡販を進めていく。またビル用のアルミ建材に加えて住宅用の樹脂窓にも注力したい。中国では中規模都市での需要が旺盛で生産拠点はフル稼働。市場環境は改善してきたが今後を見据えて組織体制など含めた構造改革を進める。台湾ではビル用の窓に加えて大型物件で使うカーテンウォールにも注力していきたい」

――インドでの建材事業についてはいかがですか。

 「インドでは現地メーカーを13年に買収し産業用の押出形材と表面処理の事業を有している。その会社の形材を使った建材事業の展開をこれまで目指してきたが、西部のムンバイなどで試験的な販売を始められた。これから品質への評判を高めるとともに、納期やコストなどに対する検証を進める。この中期計画の期間中である程度の規模にはしたいと考えている」

――ビル関連事業の拡大策は。

 「ビルでも窓の高断熱化を進める。今年度は低層の集合住宅向けにアルミ樹脂複合窓を投入するので、今後は高層物件や商業ビル向けの製品展開も目指していきたい。商業ビルになるとコストがさらに重視される傾向があるので、性能値と価格のバランスを勘案することがより重要になってくるだろう。中計が終わるまでに商業ビルの高断熱化では何らかの答えは出したい」

――産業製品での事業展開についてはいかがですか。

 「産業製品の現在の事業規模は年産3万5~6千トンだが、20年度には約1割増の4万トンを目指していきたい。現在は建築関連で使う仮設資材向けが多いが、自動車や鉄道など輸送分野にも力を入れる。今後は軽量化などでアルミ形材が求められる先を探索しながらさらに拡販を進めるとともに、収益性を勘案しつつ加工度をどこまで高めるかを考える。産業製品は極めて高い押出精度を求められるケースが多く、注力していくことで窓やエクステリアに関する技術の向上にもつながる」(古瀬 唯)

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