大山詣りの祭具再現 57年ぶり 記憶や写真頼りに 伊勢原

 神奈川県伊勢原市高森地区の古老5人が14日、地元に伝わるおはらいに使う祭具の梵天(ぼんてん)を57年ぶりに制作した。高さ約3メートルの竹を飾り付けたもので、江戸後期の1853(嘉永6)年から1960(昭和35)年までの107年間、青年団が毎夏、大山に担いで登り、奉納していた。高齢化で作り方や風習を知る人も少なくなり、郷土の文化を知ってほしいと再現した。

 同地区では毎夏、15歳から20代の男性による青年団が中心となり、30〜40人ほどで「大幣講(たいへいこう)」というグループを作り、大山詣(まい)りを行っていた。一般的な大山講の「納め太刀」の代わりに、健康を祈願して交代で担ぎ、頂上で奉納したのが梵天。榊(さかき)の葉や紙垂(しで)で飾り付けた太い青竹で、青年団が手作りした。市内でも珍しい風習だったという。杉崎三郎さん(85)は「梵天は重かったが、不思議と担ぐと足取りは速くなった」と振り返る。

 ただ、戦後になると、農業が主だった地域の若者たちは企業や役所で働くようになり、青年団活動自体が廃れてしまう。それに伴い大幣講も60年を最後に行われていない。全て奉納してしまったため、梵天も地元には残っていなかった。

 当時の青年たちも80代になり、今夏の老人会のバス旅行で「知る人も少なくなった。若い人のためにもう一度、梵天を作りたい」と梵天が話題になったという。そこで、当時、梵天作りを手伝った杉崎さん、大幣講に参加した萩原博文さん(83)らが中心となり、71歳から85歳までの男性5人で再現することに。

 14日は公民館に集まり、切り出した真竹を前に、杉崎さんの記憶と当時の写真、雑記帳に残った説明図などを参考に自作した。杉崎さんは「地元の神社に飾れば、若い人が見て、いつか大幣講を復活させようと盛り上がってくれるかもしれない」と期待していた。

 完成した梵天は神社で保管し、地域の催しなどで公開する予定という。

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