金属行人(11月15日付)

 鉄スクラップ価格が急騰している。足元の関西地区電炉メーカーの購入値はH2=3万3千円程度だが、スポット対応が多く、実質はこれを上回る▼多くの関係者にとって予想外だっただろう。直近数年間は、ほとんどの局面で輸出値の動向に国内相場が左右された。先週9日の関東テンダーの落札値が約3万2千円。国内相場をけん引するような水準ではなく、今の上げ相場は国内需給のひっ迫が作り出している▼こうした現象は鉄スクラップだけではない。中国相場に上げ一服感があるにもかかわらず、鋼材価格はほぼ全品種値上がりしている。鉄だけでもない。株式市場もおよそ26年ぶりの高値。景気拡大も2012年12月から今年9月まで続き、1965年11月から拡大が57カ月続いたいざなぎ景気を超え、戦後2番目の長さになった。また、来年度も賃上げが政府から要請されているが、実現すれば5年連続になる▼数字上は好景気なのだろう。だが、全体に波及しているとはまだ言いづらい。例えば薄板などで値上げがまだ市中全体に浸透しないのも、それだけ消費に力強さがないことの証左なのだろう▼景気のバロメーターといわれる鉄スクラップ。将来、今の上げ相場をさらなる景気拡大の兆しだったと振り返るのだろうか。

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