【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(7)】〈日鉄住金物産〉三井物産との連携強化 樋渡社長「経常益400億円規模に」

 日鉄住金物産は2013年10月、新日本製鉄系ミル商社だった日鉄商事と、住友金属工業系ミル商社だった住金物産が経営統合して発足した。13年度の旧2社単純合算ベースの連結経常利益は273億円だったが、14年度は305億円、15年度は290億円、16年度は309億円、17年度見通しは340億円と収益力は確実に向上している。

 PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)と呼ばれる合併後のさまざまな再編統合策を相次ぎ実施。人事制度、労働組合の統合完了のほか、基幹システムの統合完了、データセンター統合(18年度稼働予定)に加えて、主要グループ会社の統合を完了させた。

 こうしたPMI効果はシナジー効果として数字上にも現れており、統合効果は14年度13億円、15年度17億円、16年度24億円と増え、今17年度には30億円プラスαを見込んでいる。

 次のステージに向けた成長戦略の核は、三井物産との連携強化だ。このほど三井物産から売上高3700億円、取扱数量400万トン相当の鉄鋼製品事業の譲渡を受けることで合意。18年4月1日付でそうした譲渡が行われ、翌4月2日付で三井物産が日鉄住金物産に追加出資(議決権所有割合を11・01%から20・04%に拡大)し、三井物産が連結対象会社(持分法適用会社)とする計画だ。

 三井物産との本スキームによる期待シナジーは(1)海外における三井物産グループのSCM活用(海外コイルセンター、海外物流網・サービス網)(2)三井物産の顧客基盤の活用(自動車分野、資源エネルギー分野)(3)両社の営業基盤を活用したビジネス展開(4)国内外の加工流通分野の競争力強化―が挙げられる。

 樋渡健治社長は「三井物産との連携強化による収益押し上げ効果は年70億円程度が見込める。これによって、当社の経常利益は400億円規模になることが想定される」との見通しを示す。

 より丁寧に説明すると「鉄鋼の商売は利益率が1%程度であり、3700億円の売上げから生じる利益は40億円程度。これに加えて連携シナジーが『30億円プラスα』。統合シナジー額の根拠が何かといえば、住金物産と日鉄商事の統合効果が30億円強であり、その経験値から考えて、それをやや上回る効果が見込めるから」だと話す。

 取扱い数量面では、現在の取扱い数量(単体ベース1400万トン)に三井から移管される400万トンを加え、海外のコイルセンターなどグループ会社の取扱数量(およそ300万トン)を加えると、一部グループ内重複はあるものの2100万トンに達する規模となり「鉄鋼流通のSCM(サプライ・チェーン・マネジメント)整流化の中で、ある役割を果たせる規模になる」(樋渡社長)。

 鉄鋼、産機・インフラ、繊維、食糧の四つのコア事業を複合的に展開する複合専業商社を標榜しているが、今回のスキームは鉄鋼事業にとって大きな成長ドライバーとなる。現行中期で掲げる「国内外でのバリューチェーンの強化」が一段と進みそうだ。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=東京都港区

 ▽資本金=123億3500万円(新日鉄住金36・8%=議決権割合)

 ▽社長=樋渡健治

 ▽売上高=1兆8413億円(17年3月期連結)

 ▽主力事業=鉄鋼、産機・インフラ、繊維、食糧その他の商品の販売及び輸出入

 ▽従業員=8273人(連結)1488人(単独)

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