JR北海道「第12回JR北海道再生推進会議」の議事概要

高齢化・人口減少の続く北海道全体の「将来に向けた交通体系」

日本全体が高齢化・人口減少による過疎化・限界集落などの問題を抱えていますが、北海道はこの傾向が全国平均よりも明らかに顕著です。

1年前に書いた記事に、その具体的なデータが出ています。

結局1年前と状況はほとんど変化していません。留萠〜増毛間が廃線になりました。夕張支線は再来年に廃止になります。日高本線も実質的には廃止された状態です。とにかく、札幌近郊を除けばJR北海道のほとんどの路線が赤字なのです。長期的に見れば北海道新幹線も赤字を再生産すると思われます。

JR東日本、JR西日本、JR四国、JR九州もかなり極端な赤字路線を維持していますが、一方で都市圏での大量輸送や観光列車、不動産収入などで辛うじてバランスを維持している状況です。もちろん三江線の様に廃止される線区もあります。JR東海は東海道新幹線の莫大な収入を必要性に疑問の持たれているリニア新幹線への投資にまわしています。

結局、この議事録でも再三言われている様に「鉄道でなければならない理由=バス転換」が主題になっています。この点は鉄路を諦めてBRTに転換運行しているJR東日本の気仙沼線・大船渡線の今後が注目されます。実際に筆者も大船渡線BRTに乗ってきましたが「鉄道ではない」という情緒的な好悪を別にすれば「交通システム」として合理的であると思います。ただ、特定地方交通線で廃止された鉄道線を代替したバス路線の多くが結果的に乗客減少→運行本数削減→更なる乗客減少という悪循環の中で廃止されてきた歴史を直視しなければならないでしょう。

原則的に「運ぶもの=人・物資」の存在しない場所に交通手段は不要なのです。石炭・ニシンという明治維新以降の産業開発で爆発的に人口増加した北海道が、この2つの基幹産業を失った結果、ゆっくりと明治以前の姿に戻ろうとしていると言ってしまえば乱暴過ぎますが。

単純な人口密度の比較でも北海道の「しんどさ」は顕著です。九州で人口密度が300〜500人というエリアにある民鉄の松浦鉄道・甘木鉄道ですら経営が苦しいのです。それに比して北海道の人口密度の低さは驚くばかりです。

ここで根本的な方針を確認する必要があるのではないでしょうか?以前にも書いた様に人口減少を理由に廃止された線区の沿線は鉄道が無くなることで更に急坂を転げ落ちる様に過疎化が進みます。

その典型が1932年(昭和7年)に留萠から羽幌までが開通し1958年(昭和33年)に全通した北海道の羽幌線(141.1km)です。正に大正期に羽幌炭鉱開発によって人口が増えたエリアでしたが、1971年(昭和46年)に炭鉱が閉山し、急激に過疎化が進行、1987年(昭和62年)に羽幌線は廃止されました。

たまたま、羽幌出身の友人がいて、羽幌線が廃止された結果それまで住んで居た親類縁者全員がそのエリアを離れてしまって「故郷はまるでゴーストタウンだよ」と言っていました。羽幌町には、1965年(昭和35年)頃には3万人を越える人が住んでいましたが、現在はその4分の1以下、2016年(平成28年)の町のデータでは7、195人になっていて、町内には人口0人の消滅集落が少なからずあります。もちろん炭鉱とその関連産業が無くなって生活できなくなったという理由は大きいと思われますが「鉄道の廃止された過疎地」というマイナス意識が強く働いたコトも否めない様です。友人の言葉をそのまま引用すれば「鉄道と一緒に将来への希望が消えてしまった」とのことです。

羽幌町は12月から3月までの平均気温が氷点下、年間の平均気温が7.7℃という寒冷な地域です。友人の通った小学校は廃校になったそうです。小学校は14校が3校に減り、中学は6校が3校、高校も4校が2校に減っています。

この羽幌町がおそらく極端な人口減少の例ですが、札幌周辺の石狩平野を除けば、更に寒冷な道北、道央、道東エリアの人口減少は続いています。25年間で人口が10〜20%減少したエリアが5つ。20〜30%という異常なスピードのエリアが4つ、30%を越えるという末期的なエリアが羽幌超を含む3つもあるのです。

結局、この人口減少に歯止めがかからない限り、JR北海道の利用者が増加する要因は観光を除いてあり得ない状態です。もはやJR北海道と北海道庁の努力だけで解決できる問題ではありません。国家的な戦略で開発された北海道をどうするのか、21世紀以降の長期的国家戦略が急務です。

JR北海道「第12回JR北海道再生推進会議」の議事概要

(写真・記事/住田至朗)

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