他の子と違う…母子手帳から見る発達障害の気づき

「どこか、他の子と違う」そんな思いを感じながら、子育てしている方もたくさんいると思います。そんなときには、母子手帳を見てみましょう。

「親子健康手帳」から見る発達障害の気づき

「日本の母子手帳を変えよう」プロジェクトから生まれた新・母子健康手帳(通称:親子健康手帳)をご存知ですか。

少子化、共働き世帯の増加、不足する産科・小児科医、産後うつなど……急速に変化する子育てを巡る課題の解決に貢献するため、“次世代の母子手帳のカタチ”をつくるプロジェクトの中で生まれたもの。内容は、母子手帳に関する議論を通じて寄せられた声やアイデアをもとに、毎年改善していて、現在216自治体に使用されています。

子育てをしていらっしゃる親御さんの中には、「どこか、他の子と違う」そんな思いを感じている方もいるでしょう。初めての子供だったりすると、なかなかその辺りも判断しにくいものです。ここでは、この最新の「親子健康手帳」に見る発達障害の気づきのヒントをご紹介します。

まずは幼児期の成長の発達段階と照らし合わせて、気になることをチェックしてみましょう。

■睡眠が上手くとれない

親子健康手帳の「生活リズムの見直し~脳を育てる5つの定点」の項目には、脳の発達のためには、生活リズムを整えることが大切であることが記載されています。朝早く起きて、カーテンを開け日の光を浴びて一日を始める、そんな当たり前のことが乳児の成長にはとても重要なのです。

しかし、発達障害の特性を持つお子さんの中には、睡眠が上手くとれないことが多く、なかなか寝てくれないと嘆く母親も少なくありません。お子さんの中には30分も続けて寝ることができず、母親が体調を崩し入院してしまったという例もあります。

■成長に応じた社会性や表現力が身に付かない

親子健康手帳の「幼児期の成長と育児のポイント」の項目には、幼児期の成長の発達段階について下記のように記載されています。

●5~6歳 : 遊びを通して社会性が身に付く

通常の発達のお子さんは、この年齢で友だちや先生とのコミュニケーションについて学び、社会性が育っていきます。

しかし、社会性を育む脳の仕組みがうまくいかない発達障害のお子さんは、トラブルが生まれてしまうことが多いもの。「しつけが悪い、性格が悪い」と言われてしまいがちですが、持って生まれた障害の可能性もあるので、気をつけましょう。

またこの時期は「手先が発達し」とも記載されていますが、発達障害のお子さんには手先が極端に不器用だったり、運動が苦手なことが多く見られます。

●6歳 : 表現力・想像力・理解力が高まる

この力についても、発達障害のお子さんの苦手分野です。上手に自分の気持ちを表現したり、想像をめぐらせたり、相手の言うことを理解したりなどが苦手です。なので、上手く伝えられない、相手の言うことがわからないことで、フラストレーションがたまり、突然キレたり、自信喪失に陥ったりします。

これが続くと、トラウマになってしまい、人とのコミュニケーションを嫌がることになります。保健師さんや保育士さん、小児科医などに相談してみましょう。コミュニケーションは楽しい、伝わったという気持ちを育てることが大切です。

■お友だちと上手く遊べない・1人で遊ぶのが好き

親子健康手帳の「お友だちづくりのススメ」の項目には、幼児期の社会性の発達について下記のように記載されています。

●お友だちと一緒にいるのが楽しい3~4歳

通常のお子さんの発達からすると、この時期はお友だちと一緒にいるのが楽しい時期です。しかし、発達障害の特性のあるお子さんにとって、これは苦痛にもなりかねません。1人で夢中になって何かを行う方が楽しいお子さんも多いものです。

しかし、発達障害であってもゆっくりですが発達していくので、通常のお子さんより何年か遅くはありますがこういう時期が訪れます。お子さんの成長のスピードはその子によって違うことを覚えておいて下さい。

●仲良しができるようになる5~6歳

ここでの記載についても、上記と同じで個人差があります。仲良しのお友だちがいないからと言って焦ることはありません。また、社会のルールに気づけるようになる時期ではありますが、その辺りもなかなか上手くいかないのが発達障害の特性でもあります。根気よく教えていくことが大切です。

「生きるための必要な自己肯定感」を育もう

親子健康手帳の「きづいてあげよう 発達障害」のページには、発達障害そのものずばりについて、簡単ではありますが記載されています。ここに書かれてあるように、早めに特徴を理解してサポートすることが大切です。必要に応じて、医師や保健師に相談するのがよいでしょう。

また私はこれまでにも自己肯定感の大切さについて強く伝えていますが、親子健康手帳にもしっかり記載があります。発達障害の特性があると、一般のお子さんよりこの自己肯定感が育まれにくいものです。自分を大切に思えない人は、人を大切にできません。

いろいろできなかったり失敗してしまうのは、発達障害の特性によるもので、その子自身の人格によるものではないということをしっかり理解してあげましょう。

お子さんが問題行動を起こしてしまったときは、何が悪かったのか、そしてどうすれば良かったのかを分かりやすい言葉で伝えて下さい。そして、その行動は悪かったけれども、繰り返さなければよいことを伝えましょう。決して、本人の人格を否定しないように気をつけましょう。

人を信頼し、絆を結べる大人になるために

人は、自分を好きになれないと、人を信頼し絆を結ぶことができません。そのためには、小さい頃から人に愛され、自分が大切な存在であると思える経験の積み重ねが必要です。

社会に出て、自立するためには、たくさんの人との交流が欠かせません。小さい頃に家族に愛され、自分が大切にされた経験がないと、他人を大切にできないものです。失敗しても誰かが助けてくれる、人は信頼できるものと思える子育てをしてほしいと思います。

発達障害のある成人の多くは、親御さんに理解されず苦しんでいます。失敗するのが怖くて引きこもったり、社会に出られない人も多くいます。その原因は、周囲の理解不足です。まずは母親や家族が子どもの特性を理解し、環境を調整することが大切です。

親が子どものためを思う気持ちはみな同じです。子どもの将来のために、しつけをするのですが、発達障害のような脳機能に障害のある子どもには、努力してもできないことがあります。それがどんな事なのかはその人によって違うものです。障害でできないことを無理強いすることは、だれのためにもなりません。

まずは、母子手帳からそのヒントを得てください。そして、お子さんとほかの子との大きな違いがあれば、小児科や地域の相談機関を訪ねてみることをお勧めします。

(文:原 佐知子)

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