【課題】求められる集客力向上 J1昇格 V長崎の航跡5(完)

 来季から挑む国内最高峰の舞台は、桁違いの資金力を持つ名門クラブがしのぎを削る。Jリーグが公開している各チームの2016年度決算によると、J1最高の営業収益は浦和の66億600万円。全18チームの平均でもV・ファーレン長崎(7億4900万円)の約5倍の36億4千万円だった。営業収益の大きな柱となる広告料はJ1平均でV長崎の約5倍の17億円、入場料収入は約10倍の7億4200万円に達する。

 営業収益はチームの強化に直結する。V長崎のチーム人件費は3億2200万円。J1平均の15億7500万円と大きく差がある。ちなみにJ2降格前年だった湘南は7億9800万円、福岡は9億3700万円。それでもV長崎の2倍から3倍に上り、J1定着のためには財務基盤の強化も必要になりそうだ。

 V長崎のホームゲーム入場者数は好成績を残した今季でさえ、1試合平均5941人とJ2平均を下回っている。これに対しJ1平均(第32節終了時点)は1万8660人。ただ、髙田明が社長に就任した4月末以降、トークショー、YOSAKOI、打ち上げ花火といったさまざまなアイデアで集客に取り組み、スタジムアムの魅力づくりは進んでいる。

 上位対決となった10月21日の名古屋戦では、応援Tシャツ1万枚を入場者に配布。JR九州や航空会社のスタッフにも着てもらうよう依頼するなど趣向を凝らした盛り上げ策で、今季初の1万人超えを実現した。

 今月11日のホーム最終戦は、クラブ史上最多の2万2407人を記録した。こうした熱気をJ1の舞台でもいかに継続できるか。行政や企業、地域の協力も欠かせなくなるだろう。

 サッカーそのものも変わってくる。V長崎に所属するJ1経験選手は「1分で仕事しちゃう選手も多い」「全ての面でレベルアップが必要」と口にする。16年の福岡、15年の松本と山形、14年の徳島、13年の大分と湘南はいずれもJ1昇格から1年で降格。力の差を見せつけられた。

 主将の村上は「チャレンジャー精神を持ってチーム力で勝つ。結果が伴わないと入場者は減る。一過性のものにならないようピッチで応えていきたい」と気を引き締めた。(敬称略)

=おわり=

11日のホーム最終戦。2万2千人を超える観客がJ1自動昇格を後押しした=諫早市、トランスコスモススタジアム長崎

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