サッカーJ2のV・ファーレン長崎が、ホーム最終戦でJ1昇格を決めた11日。歓喜に沸く試合後のセレモニーで、選手、スタッフの輪の中に、チームの練習場のグラウンドキーパー、本田悟さん(57)の姿があった。約3年間、選手にけがのないよう芝生を整え、昇格を支えた。選手たちから握手を求められ、「いくらかお手伝いができたのかな」。うれし涙がこぼれた。
V長崎の専用練習場「V・ファーレン十八銀行フィールド」が2014年9月、十八銀行やチョープロ、地域住民らの協力を得て長崎市戸石町に完成。本田さんは長崎市内のゴルフ場に勤務していたが、芝生管理のプロとして請われ、15年1月、チョープロに入社、整備を任された。
サッカーグラウンドを手掛けるのは初めて。選手が駆け回った後の芝生の荒れ具合に驚いた。J1広島などを担当する業者から情報を集め、手探りでスタートした。
練習日には、朝7時からグラウンドに出て、異常がないか点検。練習が終わった後は、芝生がへこんでいないか確かめた。見つけると、鉄製の長い棒で芝生を持ち上げて平らにし、砂をまく。所要時間は4、5時間。雨の日も風の日も、黙々とほぼ1人でこなした。
昨年8月からは、諫早市多良見町の市サッカー場の整備も担当。2カ所を行き来す
る日々は多忙を極めたが「監督、選手が朝から夜遅くまで頑張る姿を見てきた。気持ちよく練習してほしい」と心を奮い立たせた。
昇格決定後のセレモニーに招かれたのは選手の発案だった。「練習に行くと、本田さんが既に作業している姿を毎回見てきた。本田さんも入れて一つのチームだから」。DF高杉は感謝する。
V長崎は15日、練習拠点を戸石から多良見に移した。「日本代表が出るようなトップレベルのクラブになってほしい」。本田さんは願いを込め、きょうも芝生に目を光らせる。
チョープロによると、戸石の練習場は今後、県のスポーツ振興のため活用していく予定。