西武の“人材難”を解消した新人王・源田、記録と記憶に残る1年を振り返る

西武・源田【写真:(C)PLM】

守備はもちろん打撃で開花、新人安打記録で歴代3位の155安打

 長年プロ野球ファンの間でささやかれていた話題の1つに、「野手としてパ・リーグ新人王を獲得する選手が出るのはいつになるだろう?」というものがあった。最後に受賞した野手は19998年の小関竜也(西武)。19年という長い時を経て、ついに今年、その疑問に答えを出す選手が現れた。

 埼玉西武の源田壮亮選手が、2017年のパ・リーグ新人王に選出された。先発ローテーションに定着して好成績を残した山岡投手(オリックス)をはじめ、チームの勝ちパターンとして活躍した高梨投手(楽天)や育成出身の石川投手(福岡ソフトバンク)といった他の候補者に競り勝ち、自身の野球人生におけるただ一度のチャンスをものにしたことになる。

 源田選手は大分商業高校、愛知学院大学、トヨタ自動車を経て、昨年のドラフトで埼玉西武から3位指名を受ける。埼玉西武にとって課題となり続けていた正遊撃手のポジションを埋める候補の1人として、その守備力には大きな期待が寄せられていた。しかし、源田選手はその期待を大きく上回る活躍で、1年目からチームに欠かせない存在となっていく。

 オープン戦で結果を残し、球団の新人遊撃手としては石毛宏典氏以来36年ぶりとなる開幕スタメン。開幕当初は9番を務めたが、4月5日から2番に定着すると、そのままシーズンを通してレギュラーを張り続けた。最終的に、2リーグ制導入後の新人としては徳武定之氏(国鉄)以来56年ぶり4人目、そして遊撃手としては史上初となる全試合フルイニング出場という偉業を成し遂げる。

 アマチュア時代から定評のあった守備でも幾度となくチームを救ったが、源田選手は打撃面でも存在感を発揮した。打率.270をマークし、リーグ最多となる10本の三塁打を放つ。リーグ最多タイの打数を重ねて安打を量産し、新人のシーズン安打記録歴代3位に躍り出る155安打。源田選手の2017年はもはや埼玉西武にとどまらず、球界全体にとっても記録的なルーキーイヤーとなった。

西武が抱えた「遊撃手の不在問題」にピリオド

 2番打者としての仕事も堅実にこなした。リーグ4位の26犠打を記録し、俊足を生かして積み上げた盗塁数は球団新人記録を塗り替える37盗塁。惜しくも盗塁王獲得とはいかなかったものの、リーグ1位の西川選手(北海道日本ハム)との差はわずかに2つ。持ち味の機動力が、すでにリーグトップクラスであることは、異論を差し挟む余地がない。

 源田選手の存在によって、過去3年間は不振にあえいでいたチーム自体も好調に転じた。遊撃手の不在問題が解決された埼玉西武は、球団記録に迫る13連勝を記録するなど好調を維持し、最終的には4年ぶりのAクラスとなる2位と躍進を果たした。シーズンが終わった頃には、遊撃手の人材難に悩んでいた記憶は、完全に過去のものとなっていたことだろう。

 パ・リーグの新人王を受賞した野手は、源田選手と同じ西武の2番打者として活躍した1998年の小関竜也氏が最後だ。それ以来、実に19年ぶりの受賞となる。遊撃手としては、その前年に選出された小坂誠氏(千葉ロッテ)以来20年ぶりで、まさに歴史的な快挙と言える。球史に残る活躍を続けた源田選手にとって、記録にも記憶にも残るシーズンを、最高の形で締めくくれたと言えるのではないだろうか。

 1年目から首脳陣とファンの厚い信頼をつかみ取り、埼玉西武躍進の立役者の1人となった源田選手。「2年目のジンクス」が立ちはだかる来季は、真価を問われる勝負の1年となる。新人王受賞以降もレギュラーとして長くチームを支えた「先達」に続くことができるか。19年ぶりとなる野手新人王の新たな挑戦が、またここから始まる。

(Full-Count編集部)

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