中古EVで大容量蓄電池

 産業機器製造の日本ベネックス(諫早市)と住友商事などは、電気自動車(EV)の中古バッテリーを再利用した大容量の産業用蓄電池を共同開発した。EV24台分をコンテナに収める形で、容量は一般家庭約40世帯の1日分を賄える約400キロワット時。国の実証事業として来年2月に日本ベネックスの工場で運用を始める。来年度中の量産販売を計画している。

 EVの世界累計販売台数は2009年度以降で約120万台に上り、廃車などに伴う中古バッテリーの有効活用が問われている。

 住友商事は10年、バッテリー調達のため日産自動車と新会社を設立。中古バッテリーによる大型蓄電池を世界で初めて開発した。13年度から大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で、15年度からは日本ベネックスも加え鹿児島県・甑島(こしきしま)で実証機を運用してきた。

 順調な稼働が確認できたため容量を倍増し商用化する。工場やビル、病院などの分散型電源として普及を図る。富士電機が販売主体となり、価格は約8千万円を予定。低廉化も進める。

 日本ベネックスと住友商事は本年度、関西電力などが16~20年度に進める国の「バーチャルパワープラント(VPP、仮想発電所)構築実証事業」に参画。諫早市津久葉町の日本ベネックスの工場で、既存の太陽光発電設備を稼働させつつ、今回開発した蓄電池と新たに導入した業務用EV10台などをIoT(モノのインターネット)化し、関電などが充放電を遠隔制御する。

 工場内の電力需給を最適化することで「年間2千数百万円の工場電気代を約1割削減できる見込み」(小林洋平日本ベネックス社長)。住友商事の藤田康弘エネルギー・マネジメント事業チーム長は「VPPのビジネスモデルも構築したい」と話している。

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