【現場を歩く】〈ナカヤマ・春日井工場(愛知)〉溶湯温度計測システム、中核部品を生産 サーモの核、微細加工で高精度な計測可能に

 熱分析システムの製造・販売などを手掛けるナカヤマ(本社・名古屋市西区、社長・中山士郎氏)の国内メーン製造拠点である春日井工場(愛知県春日井市松本町、工場長・勝田真司氏)は、1898年にスタートし、08年に現在地へ移転した。(片岡 徹)

 JR高蔵寺駅から車で約10分。近くには大学など文教施設もある閑静な住宅街の一角で、溶湯性状を熱分析するための熱電対(クリスタル・サーモ)とカップを製造するとともに、同社の量産工場である大連工場(01年に中国・遼寧省大連市に設立)と連携し、国内出荷用製品の常時在庫体制を整える。

 溶湯の品質管理には、温度の正確な測定が不可欠。その計測端子となるのがサーモ(直接溶湯に差し込み温度を計測)で、溶湯の一部を採取し分析するのがカップだ。

 春日井工場は現在、15人体制。主に鋳物業界で用いるカップを月間15万個、サーモは同約4万本を製作・出荷する。

 心臓部となる部品は基本的に春日井工場で製作し、それを大連工場へ送る。大連ではそれを最終製品に仕上げ、日本を含む世界へと出荷する。国内分の特殊サイズ品などは、春日井工場で最終製品に仕上げて出荷する。

 同社は、1972年に設立。主に鋳鉄の熱分析(化学成分測定器、溶湯性状判定器)溶解温度・注湯温度の測定器および消耗品を製造・販売する。熱電対は、年間500万本を生産。日本のほか台湾の現地法人、韓国、タイ、インドネシア、マレーシア、台湾、ブラジルの各国で販売代理店契約を結び、在庫・販売している。

 また、測定データの通信(有線・無線)のやり取り、表示機、データ処理などを含めたソフトプラグラミング測定器、通信機器なども製造・販売している。

 鋳物業向けの熱電対や測定システム販売の歴史は長く、国内シェアは約50%。今後は精度の高い消耗型熱電対などを鉄鋼業界向けにも拡販する計画。

 国内の営業拠点は、本社および東日本営業所(福島県)にある。

 サーモの核となるのは、髪の毛ほどの微細な線材。プラチナ製だ。これが熱を正確に感知する。それを精密な自動切断装置で切断加工し、口径5ミリにも満たないようなU字のガラス細管に均一に通す。それを下部のユニットに接続・固定する。この製造工程が、サーモの品質を決める。自動機は無人でも稼働するが、作業は効率的。

中国・大連工場と連携、鉄鋼業向けシェア拡大

 カップは、金型に砂(コーテッド・サンド)を圧入し、熱を加えて成形する。カップ内の中央部に突起があり、そこにもガラス直管と内部にプラチナ製の熱感知部が組み込まれる。

 溶湯が凝固する時間と温度を計測することにより、溶湯の成分が解析できる。

 これらの製品は、棒状の巻紙(サーモを溶湯に接触させるための竿)やカップ本体などとともに、溶湯の温度を計測すると、熱で溶け、チャージごとに新たな製品を使用することになる。

 春日井工場で製造された心臓部の部品を、大連工場に送る。「品質管理には特に気を遣う」(勝田工場長)といい、顧客ニーズにきめ細かく対応して製造しているが「オーダーがあれば、大ロットでの生産も可能」(同)という。

 主に大連工場から送ってくる製品と春日井で製作した製品を箱詰めし、在庫するヤードには、ニーズにマッチするように常時在庫体制が整っていた。入荷した製品を上手に保管・管理し順次出荷する。

 同社では、高精度・高品質のクリスタル・サーモを始め、測定結果を大型ディスプレーに表示しその結果を瞬時に無線送信して事務所のパソコンに記憶させるシステム(無線出力溶湯温度計)をPR強化し、鉄鋼業向けにもシェアアップを図ることにしている。

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