成人誌販売中止問題「置かないでほしい」 

 イオンが成人向け雑誌の販売を中止する方針を固めたことが21日、分かった。書店を含め、雑誌を扱うグループの全国7千店で、来年1月から販売をやめる。傘下のコンビニ「ミニストップ」が12月から千葉市内で先行して取り組む。女性や子どもが安心して店舗を訪れるよう配慮する狙い。コンビニ各社も対応を模索しており、今後こうした動きが広がる可能性がある。子どもが読み上げ 女性の自尊心阻害 コンビニで成人向け雑誌の販売を中止しようとする動きに、子育て世代や在日外国人からは好意的な声が上がった。

 「大人のセックス」。相模原市内のコンビニで、小学1年の次女(6)が読み上げた言葉に、秦野市の男性会社員(42)は仰天した。簡単な漢字が読めるようになってきた次女は何気無く成人向け雑誌の見出しを目にしたという。男性は「こうした環境はやめてほしい」と訴える。

 成人向け雑誌が置いてある一角はトイレ付近に設けられていることが多い。藤沢市の主婦(47)も「前を通れば、嫌でも目に飛び込んでくる。きわどいポーズをした女性が表紙に写っていたり、暴力的な表現がされていたりする雑誌もある。見ただけで自尊心を阻害されたと感じる女性もいるのでは」と話す。

 コンビニでの成人向け雑誌の取り扱いを巡っては、これまでも議論を呼んできた。昨年3月、堺市とファミリマートが協定を結び、成人向け雑誌にカバーを掛けて販売。一方、日本雑誌協会と日本書籍出版協会は「表現の自由に抵触するのではないか」と質問状を送り、協定解除を求めた。

 神奈川県弁護士会の太田啓子弁護士(41)は「公共空間のあり方の問題で、『表現の自由に抵触する』というのは議論のすり替えなのでは」と指摘。「誰もが利用する公共性の高い空間でどこまで性的なものを許容するのか、ということについて社会で議論すべき」と語る。

 今回の取り組みは、千葉市の熊谷市長が今年2月、2020年東京五輪・パラリンピックなどを踏まえ、対策に乗り出す意向を示したことがきっかけになったという。都内在住のフランス人女性(65)は「フランスの場合は書店や駅のキオスクなどに置いてあるが、それでも特別な一角にあり、日本のようにすぐ目につかない。全てのコンビニで販売をやめるべきだ」と語気を強めた。

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