【新日鉄住金グループ企業の〝今〟(8)】〈日鉄住金SGワイヤ〉OT線需要捕捉へ、生産体制の最適化探る 「グローバルマネジメント」を実践

 日鉄住金SGワイヤ(NSSG)は、ピアノ線の国産化に向けて1938年に前身の鈴木金属工業を設立以来、親会社の新日鉄住金が供給する線材と高度な加工技術を通じて、特殊鋼線や特殊ワイヤをはじめとする総合メーカーとして業容を拡大してきた。

 直近の最も大きな転機は2009年。世界最大の弁ばね用ワイヤメーカー、スウェーデンのガルピッタンを買収し、スズキガルピッタン(SG)として完全子会社化したことで、同社のグローバル展開が本格化した。ステンレスワイヤについては、住友電工スチールワイヤーとのJVとして鈴木住電ステンレスを設立。11年にはタイの鋼線メーカー、タイスペシャルワイヤを連結子会社化した。

 今年に入ってからもメキシコ中部に弁ばね用鋼線の新工場を立ち上げるなど国内5社、海外8社のグループ会社を有するグローバル企業として日本、欧州、北中米、中国、東南アジアに生産拠点を展開する。

 SGがグループの一翼を担うようになって以来、NSSGでは「名実とも真の意味での『グローバルマネジメントの実践・実行』に動いている」(柴田真之社長)。日本からSGに社員を派遣して技術指導に当たる一方、SGからは欧米流のビジネス手法の考え方などを学ぶといった相互補完の取り組みが時間の経過とともに深化している。

 年2回、柴田社長やSG本社のヤン・ピータースCEOをはじめ各サイトから代表者らが集い、グローバル戦略を議論するのはその一環。グループ全体で最も生産量が多い、自動車弁ばね用のオイルテンパー(OT)線をめぐる最適な生産体制の確立は大きなテーマの一つに挙がる。直近では今年10月に東京で開催した。

 当初は市場や技術の動向を素早く的確につかむ「情報交換の場」が、今や「OT線のグローバル戦略を議論し、その方針を各サイトに徹底するグローバルビジネスの実践の場」(同)までに深化を遂げている。旺盛なOT線の世界需要をどう捕捉していくのか。各工場の生産品目や稼働状況を基に、全体最適を満たす手立てを導き出す。NSSGでは、習志野工場で自動酸洗設備に続き、順次OT炉を新鋭化し、SGの各サイトでも能力増強も検討・推進する。

 グローバルマネジメントの実現に向けた取り組みは、市場開拓の動きにも及ぶ。SGが製造しないNSSGの鋼線製品をSGの各拠点から欧米の需要家に出荷(リセール)することや、各サイトの営業スタッフと連携して欧州・北米・中国のマーケットにおける組織的な調査・分析を実施し、新たな商機の創出に活路を見いだす。

 OT線をめぐっては、自動車の生産台数が増加し、需要が急速に伸びている。需要捕捉をめぐる一連の議論では、新日鉄住金を交えて母材の観点からも製品供給の在り方を探る。

 6年に及ぶ習志野工場のリフレッシュにより、ハード面の対策は一区切りついたことから、次のステップでは、ソフト面を強化すべく業務プロセス改革を進め、生産性を高めていく考えだ。国や地域の垣根を超えてソフト・ハードの両面で最高の品質と機能を追求し、日本(NSSG)の技術力・現場力と欧米(SG)の営業力・マーケッティング力を融合させた総合力の発揮を目指していく。(このシリーズは毎週水曜日に掲載します)

企業概要

 ▽本社=東京都千代田区

 ▽資本金=36億3400万円(新日鉄住金の出資比率=100%)

 ▽代表者=柴田真之

 ▽売上高576億円(17年3月期連結)

 ▽主力事業=ピアノ線やオイルテンパー線をはじめとする特殊鋼線の製造・販売

 ▽従業員=1525人(連結、17年3月末)

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