完全養殖クロマグロ出荷へ フィード・ワン、極洋との合弁で

 苦節31年、社員の悲願が結実−。配合飼料大手のフィード・ワン(横浜市神奈川区)が水産大手の極洋(東京都港区)との合弁で手掛けてきた完全養殖クロマグロの商業出荷が11月から開始されることになり、養殖拠点のある愛媛県で22日、出荷披露式が開かれた。両社や同県など行政、地元の水産関係者ら約100人が出席。苦労を重ねて確立した完全養殖のノウハウを生かし、資源保護が課題となっているクロマグロの持続的な安定供給に向け、決意を新たにした。

 完全養殖は、人工種苗由来の成魚を親として、その親同士から産まれた卵をふ化・生育するサイクルを繰り返して出荷する。すでに、近畿大やマルハニチロが行っている。

 フィード・ワンの山内孝史社長は披露式で、本年度は60トンの生産・出荷を見込み、来年度以降には200トンに拡大する意向を示した。今後は完全養殖に効果的な配合飼料の開発・販売に注力し、飼料需要の開拓を主眼に据える。

 同社のクロマグロ完全養殖の歩みは、前身の日本配合飼料が研究を始めた1986年にさかのぼる。何年も産卵がなかったり、稚魚になっても海上のいけすに移すことがかなわなかったり、苦難の連続だった。2012年に極洋と合弁会社を設立。四国西南部の宇和海を拠点に、両社の種苗、養殖技術を融合し、試行錯誤の末、14年にノウハウの確立にこぎ着けた。

 足かけ31年を振り返り、山内社長は「社員の夢が詰まっている。この日を迎えられてよかった」と話し、弦巻恒三会長も「感無量」と喜んだ。

 会場では、14年夏に誕生した完全養殖第1号クロマグロ(51キロ)の解体ショーが行われ、切り分けられたトロや赤身などを試食。出席者の反応は「天然物に負けないおいしさ」と上々で、山内社長は「資源保護と合わせ、生産履歴がはっきりしており、消費者に安心して手に取ってもらえるはず。その点でも優位性がある」と期待した。

 ブランド名は資源や販路、事業などをつなぐとの意味を込め、「本鮪(まぐろ)の極 つなぐ」で展開。極洋の今井賢司社長は「スタートラインに立ったばかりだが、完全養殖の価値を理解してくれる取引先と、拡販の取り組みを進めたい」と決意表明した。

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