タナベ、中部電力と共同で薄板洗浄装置を開発 水蒸気・水で脱脂洗浄

 ロータリーキルン、リサイクル設備などのタナベ(本社・糸魚川市、社長・田辺郁雄氏)はこのほど中部電力(本社・名古屋市、社長・勝野哲氏)と共同で水蒸気・水で脱脂洗浄を行う薄板洗浄装置スチームアクアジェットを開発した。薄板生産ラインを持つ工場を対象に今月から営業受注を開始した。

 薄板に圧延する際に付着している油の焦げ付きなどの汚れを防止するため、非接触で薄板表面に付着した油分を除去する装置。メンテナンス軽減、場内環境の改善に寄与する。

 タナベが得意とする加熱水蒸気の利用技術を生かし、水蒸気ハイブリッド洗浄システムを開発。(1)上下の筒状の装置に水蒸気と水を供給(2)ノズルから水蒸気と水を噴出(3)水蒸気による加熱と水による打撃力で板表面に付着した油分を除去する。

 洗浄装置の排水は油水分離槽を介し、温水として再循環することで水使用量の削減と洗浄能力の向上を図る。

 従来品は薬剤を浸したフェルトを板に擦り付ける方法で脱脂し、部品交換などメンテナンスに労力がかかっていた。

 開発品はメンテナンス労力を大幅に削減し、ノズルヘッダ構造の最適化により装置の小型化を実現。設備本体は幅2300ミリ、奥行き2千ミリ、高さ1500ミリで、処理サイズは1千から2千ミリ幅。搬送速度は秒速1メートル程度。既存の薄板生産ラインに追加することも可能だ。

 同社はこれまで加熱水蒸気式金属切粉脱脂ローターキルンで国内伸銅メーカーなどへの納入の実績があり、ノウハウを他の設備に活用したい思いがあった。従来から連携のある中部電力と一緒に2年かけて研究開発を行い、簡易で連続的に処理できる設備を開発した。中部電力は技術面や開発資金、エンドユーザーへの紹介をサポート。10月下旬には中部電力技術開発本部で行われた展示会に出展し好評だった。

 社内の試験設備ではステンレス、アルミ、銅、溶融亜鉛めっき鋼板各3~4ミリ程度で検証し、効果が認められた。ゼロエミッションリサイクルの利用技術として特許出願中で圧延工場向けへの採用を目指す。

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