【日新製鋼ステンレス鋼管の営業戦略】〈平野敦三社長に聞く〉顧客指向、マーケット指向徹底 引き受け20%削減実施

 ステンレス溶接鋼管トップの日新製鋼ステンレス鋼管(本社・兵庫県尼崎市、社長・平野敦三氏)は、2015年4月に日新製鋼から販売機能を継承して製販一体化を図った。16年8月には衣浦工場(旧日金工鋼管)を尼崎の本社工場に集約して1工場体制とした。今年4月には営業畑出身の平野社長が就任し製販一体営業を強化している。平野社長に営業戦略を聞いた。(小林 利雄)

――御社の特長は。

 「TIG溶接、高周波溶接、レーザ溶接の3種類の造管方法を持っていることで、マーケットの要望に適したステンレス溶接鋼管を供給できることが特長だ。特にレーザ溶接鋼管の技術力はトップだと自負している。来春には114・3ミリ径(従来は最大54ミリ径)まで造管可能なレーザ4号造管機の営業運転を開始予定で自動車や屋内配管分野での適用範囲が拡大できる」

日新製鋼ステンレス鋼管・平野社長

 「特に従来シームレス管が占めてきたボイラや熱交換器用途での代替需要を掘り起こすことが可能になることは、お客様にも大きなメリットが出ると期待している。すでにボイラ排熱や排ガスなどを熱交換や二次熱源に再利用するエコマイザー用途向けの高合金クロム系ステンレス溶接鋼管の製品化を確立しており、その造管でレーザ4号機が大きな武器になる」

――生産量は。

 「足元で月3千トン。TIG溶接管が月1400トン、高周波溶接管が同1200トン、レーザ溶接管が同400トン。工場全体としてフル稼働が続いている」

――2年前から販売も独自で行っている。

 「従来は製造専門会社で、販売は日新製鋼が担当してきたが、15年4月から当社が製造と販売を一体的に行う形になった」

――販売面ではどんな取り組みを?

 「日新製鋼のDNAである『顧客指向・マーケット指向』を基本に、マーケットと会話していくことが大事との認識で、お客様のところに足繁く通い、販売状況・在庫状況など市場の状況をしっかりつかんで、需給バランスを大事に維持していくことを心掛けている。私自身も日新の鋼板やステンレス営業畑出身で、客先に出向くことを大事にしてきた。当社の営業拠点は大阪、東京、福岡。顧客指向で荷ぞろえ力や納期対応力など機動力をさらに高めていく」

――ステンレス溶接鋼管の市場規模など現況は。

 「国内生産量は月約1万トン。TIG溶接管が60%強、高周波溶接管が30%強。残りがレーザ溶接管。用途は配管、屋内配管、構造用などで建設関連から自動車・産機まで幅広い。店売り向けがほぼ60%。韓国、台湾などからの輸入材も月700~800トン。多い時には1千トン超もある」

――3月に日新製鋼が新日鉄住金の子会社となり、御社の営業活動にも変化が?

 「大きな変化だ。新日鉄住金グループには同業の日鉄住金ステンレス鋼管があるが、同じグループになったことで多方面での連携が可能になった。技術面では切磋琢磨し、販売面では市場の安定化など足並みをそろえていけると確信している」

――市場環境がなお厳しいようですが。

 「店売り、ヒモ付きともに実需は上向いているが、市中在庫が比較的高水準だ。ステンレス溶接鋼管は多サイズ品種で在庫が多めになるが、足元の流通在庫水準は2・5カ月分を超えている。歯抜けサイズもあるが全体的には多い。このため、当社は11月契約で引き受け20%カットを実施する。実需は確実に増えてきているのに市況はいまひとつ強くならない。ここはマーケットの現状をしっかり把握して需給バランスをとっていきたい」

© 株式会社鉄鋼新聞社