やまゆり試み全県へ 県の次期障害福祉計画素案

 神奈川県は22日、2018〜20年度に行う障害者福祉施策のベースとなる「県障害福祉計画」の素案を明らかにした。施設入所者が生活の場をグループホーム(GH)などに移す「地域生活移行」について、国の指針を上回る目標値を設定。移行の前提となる意思決定支援や相談体制の充実、受け皿の整備など、ハード、ソフト両面の支援策を盛り込んだ。

 殺傷事件があった県立障害者施設「津久井やまゆり園」の入所者に実施している、意思決定支援を前提とした地域生活移行の取り組みを全県でも展開していく姿勢を鮮明にした形。県が同日の県障害者施策審議会で示した。

 素案によると、20年度末までの地域生活移行者数の目標値は、16年度末の施設入所者数(4898人)の約10%に当たる473人で、国の指針(9%以上)を上回る。達成に向けた方策として、重度障害者に対応したGHの整備や運営への支援を明記。意思決定支援の要となる相談支援専門員の確保や質の充実、施設入所者の家族や職員に対する意思決定支援の理解促進なども盛り込んだ。

 ただ、達成のハードルは高い。15〜17年度の現計画は国の指針を下回る形で13年度末の入所者数の約11%(535人)を掲げたものの、残り1年となった16年度末時点の実績は約4%(193人)と大きく乖離(かいり)。中軽度者の地域生活移行が一定程度進んだ一方で、重度の障害がある人が進んでいないのが要因とみられる。

 素案の作成過程では、実態により近い目標値にとどめることも検討されたが、事件を契機に現状が浮き彫りになったことも踏まえ、重度者の支援策を充実させ、高い目標を設定した。県障害福祉課は「ハード、ソフト両面の施策化をしっかりと図り、達成したい」としている。

 素案は県議会に報告した上で、12月から来年1月にかけてパブリックコメント(意見募集)を実施し、年度内に計画を策定する。

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