辻褄が…

 論理的な整合性や一貫性の有無などをいう「つじつま」は和裁から生まれた言葉らしい。漢字で書くと「辻褄」。「辻」は縫い目が十字に出合う場所、「褄」は着物の裾の左右が合わさる所▲ピタリと合うのが当たり前だったからこそ-の慣用句だろう。細かな採寸もミシンもなかった時代のこと、「当たり前」を支えていたのは職人の高い技術と丁寧な仕事だ。行き当たりばったりではピタリとはいかない。歪(ゆが)みに気がついたら一からやり直す▲小学校統廃合に伴う新校舎の建設予定地で見つかった長崎市の「小島養生所」の遺構問題。保存を問う住民投票の実施を目指している市民団体が「直接請求に向けた署名集めを妨害された」として長崎市長や市の幹部職員らを告訴した▲市は、妨害の意図はなかったと釈明している。告訴状の行方は捜査機関に委ねるほかない。ただ「妨害」と市民に感じさせたこと自体、深い反省が必要だ▲市長が掲げてきた「市民力」とこの事態の関係はどうなのか、とつい考える。出島に新しく架かった橋を「歴史と現代と未来をつなぐ懸け橋に」と語ったのは誰のどの口なのか、とつい問いたくなる▲辻褄が合わないどころか、あちこち矛盾や綻び(ほころ)だらけに思える。何度も同じ話を書いていると承知で書く。どうか丁寧な仕事を。(智)

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