「働き方改革」 多様な選択肢の実現を 安部恵美子 氏

 来春の大卒予定者の内定率(10月1日時点)が、調査を始めた1996年以降、最高の75・2%に達した。高卒予定者の内定率(9月末現在)は62・7%で、前年同期比2・3%の増加である。景気回復で企業等の採用意欲が高まり、早い段階に内定を出す傾向が高まっているという。

 前年に人材を採りきれていない企業も少なくない。学生優位の売り手市場は全国的な傾向で、筆者の本務校でも例年より早いペースで、採用の内定が決まっている。就職課では早期離職を招くミスマッチにならぬよう、内定後の指導やケアが続けられている。

 マスコミ等で一時大きく取り上げられた「ブラック企業」を避けたい思いが強いのだろう。学生たちの現在の関心は、採用時の間口が広がった分、職場での働き方に向いている。ワークライフバランスを考えて休日の少ない企業には行きたくないという学生もいるが、バリバリ仕事をしたいという学生でも、残業や休日出勤がどのくらいあるのかを知りたいという気持ちが強い。今年の就職活動では「ホワイト企業」、つまり働きやすさを強くアピールした企業に学生が殺到したという。

 安倍政権は「働き方改革」をワークライフバランスにとっても、生産性にとっても好ましい変革であり、日本の経済再生に向けての最大のチャレンジと位置づけている。

 20世紀後半のわが国の経済成長を支えたのは、学卒後の一括採用と終身雇用による「メンバー型」労働であった。しかし、今後の人口減少による慢性的な労働力不足を補うためには、女性、高齢者、外国人等、従来のメンバーシップに基づく単線型のキャリアパスに適合しない、労働力を活用せざるをえない。

 そのため、組織に縛られない、多様な働き方の実現が求められている。働く人の視点に立った働き方改革が着実に進んでいけば、個人の事情や家庭環境に合わせた働き方、子育てや介護と両立できる働き方等を容易に選択できるようになる。その結果、働くことが、人生のさまざまなステージと無理なく繋(つな)がることになるだろう。

 働き方は「暮らし方」そのものである。今、学校段階を終えて「職業生活」に就こうとしている若い人々は自分の個性や能力を生かした働き方を続け、心豊かで充実した暮らしを築いてほしい。そして、自らの労働の価値を高めて、社会全体のイノベーション創出や生産性向上に繋(つな)げ、より豊かな次世代の暮らしに貢献してほしい。そのために、どのような働き方改革を行うべきかについて、十分に検討していかなければならない。

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