金属行人(11月27日付)

 京都・西京極周辺に見られる弥生時代(後期)の大集落跡。10年ほど前に行われた発掘調査では1~2世紀ごろのものとみられる竪穴住居が8棟見つかっている。その中央部にあるもっとも古い住居に、何と「鉄鋼製品」を生産した跡があった▼ご存知の方も多いと思うが、同集落跡では縄文時代から平安期に至る遺跡が発見されている。まさに京都の奥深さを知るわけだが「鉄器生産」の遺構はとりわけ話題になった。炉の跡や加工する際に出た小さな鉄片が約100点。同時代に近畿地方で鉄器が生産されていたことを示す発見は極めて少ない▼この調査結果につなげる作業がまたすごい。発掘した大量の土を3種のふるいに掛け、残った細片などを丹念に見ていく。大変な労力と時間、忍耐のいる仕事。その結果、直径2~3ミリという微細な鉄片、鉄滓が識別できた。2千年ほど昔、この炉で鍛造品が生産されていたということ。こんなところにも、今につながる「ものづくり力」を発見できそうだ▼弥生時代のその当時、鉄の生産は権力構造にも大きく影響を与えていたに違いない。鉄は、歴史的に時代と文化に大きな影響を与える素材として人々の暮らしに関わってきた。その将来はどうか。

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