1軍定着は“狭き門”、他球団で開花する逸材も…巨人過去10年のドラフト査定

2012年ドラフト1位で巨人に入団した菅野智之【写真:Getty Images】

11年連続CS進出ならず、今オフ若返りを図る

 巨人はこの10年間、12球団で最も多い116人もの選手をドラフトと育成ドラフトで獲得している。しかし、実績を挙げないままに退団した選手も多いのが実情だ。最近10年ではリーグ優勝5度、CS出場9度、日本一2度の成績。11年連続CS出場を逃した今季は、オフにチームの若返りを図るため、村田修一内野手、實松一成捕手らを戦力外通告としたが、次世代を担う若手は育っているのだろうか。

 過去10年のドラフト実績を振り返ってみよう。

※は現時点での現役選手

○2008年
1位・大田泰示 内 東海大学相模高・343試210安24本86点16盗 打率.243 日ハムへ※
2位・宮本武文 投 倉敷高・(1軍出場なし)
3位・齋藤圭祐 投 千葉経済大学附属高・(1軍出場なし)
4位・橋本到 外 仙台育英学園高・393試230安9本79点31盗 打率.243※
5位・笠原将生 投 福岡工業大附属城東高・7勝1敗1S3H 防御率4.34
6位・仲澤広基 内 国際武道大学・14試2安0本1点0盗 打率.250 楽天へ
育1位・杉山晃紀 投 綾部高・(1軍出場なし)
育2位・尾藤竜一 投 岐阜城北高卒・(1軍出場なし)
育3位・山本和作 内 大阪経済大学・115試37安4本17点3盗 打率.207 オリックスへ
育4位・福元淳史 内 NOMOベースボールクラブ・16試8安0本4点0盗 打率.222 ソフトバンクへ

 1位は今季から日本ハムに移籍して規定打席に達した大田泰示。大器と言われながら、巨人時代はレギュラーに定着できなかった。4位の橋本到は外野手として活躍している。他の8選手は現役を退いている。

○2009年
1位・長野久義 外 Honda・1093試1160安124本448点90盗 打率.286※
2位・鬼屋敷正人 捕 近畿大学工業高専・2試0安0本0点0盗 打率.000
3位・土本恭平 投 JR東海・0勝1敗0S0H 防御率7.36
4位・市川友也 捕 鷺宮製作所・251試105安6本42点1盗 打率.202 日ハムへ※
5位・小野淳平 投 日本文理大学・4勝5敗0S1H 防御率4.33 広島へ※
育1位・星野真澄 投 信濃グランセローズ・1勝0敗0S2H 防御率4.37
育2位・河野元貴 捕 九州国際大学付属高・11試1安1本3点0盗 打率.063※
育3位・陽川尚将 内 金光大阪高・(入団せず)のち阪神※
育4位・大立恭平 投 岡山商科大学・(1軍出場なし)
育5位・神田直輝 投 群馬大学教育学部準硬式野球部・(1軍出場なし)

 1位の長野久義は2006年日本ハム、2008年ロッテのドラフト指名を蹴って、2009年に「相思相愛」の巨人に入団。2年目に首位打者、3年目に最多安打と期待通りの活躍を見せた。4位の市川は2013年金銭トレードで日本ハムへ。大野奨太に次ぐ2番手捕手として活躍している。現在阪神の陽川は、この年巨人に育成で指名されたが入団を拒否し、東京農業大に進学した。

○2010年
1位・澤村拓一 投 中央大学・44勝41敗73S13H 防御率2.61※
2位・宮國椋丞 投 糸満高・21勝19敗1S12H 防御率3.58※
3位・田中太一 投 大分工業高・(1軍出場なし)
4位・小山雄輝 投 天理大学・8勝8敗1S5H 防御率3.08 楽天へ※
育1位・和田凌太 内 広島工業高・(1軍出場なし)
育2位・岸敬祐 投 愛媛マンダリンパイレーツ・(1軍出場なし)
育3位・福泉敬大 投 神戸9クルーズ・(1軍出場なし)
育4位・荻野貴幸 内 愛知工業大学・(1軍出場なし)
育5位・財前貴男 内 エイデン愛工大OB BLITZ・(1軍出場なし)
育6位・成瀬功亮 投 旭川実業高・(1軍出場なし)※
育7位・川口寛人 内 西多摩倶楽部・(1軍出場なし)
育8位・丸毛謙一 外 大阪経済大学・1試0安0本0点0盗 打率.000 オリックスへ

 この年1位の澤村も「相思相愛」と言われて入団。これまで先発、救援で活躍したが、今季は1軍登板がなかった。宮國も大型右腕として期待されているだけに、来季の奮起を期待したい。この2人と楽天に移籍した4位の小山、育成6位の成瀬を除く8人はプロ野球から去っている。

2011年ドラ1松本は野球賭博関与で失格選手に

○2011年
1位・松本竜也 投 英明高・(1軍出場なし)
2位・今村信貴 投 太成学院大学高・6勝8敗0S1H 防御率5.32
3位・一岡竜司 投 沖データコンピュータ教育学院・11勝7敗4S47H 防御率2.38 広島へ※
4位・高木京介 投 國學院大學・6勝0敗1S21H 防御率3.03 育成契約※
5位・高橋洸 外 日本文理高・(1軍出場なし)※
6位・江柄子裕樹 投 東芝・1勝5敗0S0H 防御率4.10※
7位・田原誠次 投 三菱自動車倉敷オーシャンズ・8勝5敗0S29H 防御率3.12※
育1位・森和樹 投 市立柏高・(1軍出場なし)
育2位・土田瑞起 投 愛媛マンダリンパイレーツ・2勝0敗1S0H 防御率6.89※
育3位・柴田章吾 投 明治大学・(1軍出場なし)
育4位・芳川庸 捕 洛北高・(1軍出場なし)
育5位・雨宮敬 投 新潟アルビレックスBC・(1軍出場なし)
育6位・渡辺貴洋 投 新潟アルビレックスBC・(1軍出場なし)

 1位松本と4位高木京介は、2015年オフに野球界を揺るがした「野球賭博事件」に関与。松本は失格選手として公示されて退団。高木は1年の失格処分の末、今季は育成選手として巨人に復帰した。3位の一岡はFA移籍した大竹寛の人的補償として広島に移籍。今ではカープの「勝利の方程式」の一翼を担っている。

○2012年
1位・菅野智之 投 東海大学・61勝33敗0S0H 防御率2.18※
2位・大累進 内 道都大学・29試0安0本0点2盗 打率.000 日ハムへ※
3位・辻東倫 内 菰野高・35試14安0本1点1盗 打率.203※
4位・公文克彦 投 大阪ガス・3勝0敗0S3H 防御率3.07 日ハムへ※
5位・坂口真規 内 東海大学・8試4安0本1点0盗 打率.308※
育1位・田原啓吾 投 横浜高・(1軍出場なし)
育2位・松冨倫 内 別府大学・(1軍出場なし)ソフトバンクへ

 日本ハムのドラフト指名を蹴って1年浪人した菅野が、これも「相思相愛」で1位入団。原辰徳前監督の甥でもあるが、今や球界を代表するエースに成長した。4位の公文は今シーズン日本ハムにトレード移籍し、ブルペンに定着した。

○2013年
1位・小林誠司 捕 日本生命・400試227安10本89点6盗 打率0.214※
2位・和田恋 内 高知高・(1軍出場なし)※
3位・田口麗斗 投 広島新庄高・26勝19敗0S0H 防御率2.72※
4位・奥村展征 内 日本大学山形高・48試27安0本5点1盗 打率.227 ヤクルトへ※
5位・平良拳太郎 投 北山高・1勝4敗0S0H 防御率7.64 DeNAへ※
育1位・青山誠 外 日本大学・(1軍出場なし)※
育2位・長江翔太 投 大阪経済大学・(1軍出場なし)
育3位・北之園隆生 投 秀岳館高・(1軍出場なし)※

 1位指名の小林は、打撃にやや難があるとされながらも正捕手に。3位の田口は今や巨人の先発ローテには欠かせない存在となった。

○2014年
1位・岡本和真 内 智辯学園高・35試13安1本6点2盗 打率.188※
2位・戸根千明 投 日本大学・3勝1敗2S10H 防御率3.93※
3位・高木勇人 投 三菱重工名古屋・15勝21敗0S1H 防御率3.56※
4位・田中大輝 投 國學院大學・(1軍出場なし)※
育1位・篠原慎平 投 香川オリーブガイナーズ・1勝1敗0S0H 防御率3.62※
育2位・川相拓也 内 桜美林大学卒・(1軍出場なし)※
育3位・田中貴也 捕 山梨学院大学・(1軍出場なし)※
育4位・高橋慎之介 投 木更津総合高卒・(1軍出場なし)

 智辯学園の強打者だった岡本に期待が掛かるが、まだ頭角を現していない。2位の戸根は中継ぎ、3位の高木勇人は先発で一時期活躍。育成出身の篠原は、今季苦しい中継ぎ陣を助けた。川相昌弘3軍監督の息子、拓也は支配下選手になることなく、今オフに戦力外となった。

2015年ドラ4宇佐見と2016年ドラ2畠は今季後半に1軍で貢献

○2015年
1位・桜井俊貴 投 立命館大学・0勝2敗0S0H 防御率6.03※
2位・重信慎之介 外 早稲田大学・99試26安0本4点15盗 打率.174※
3位・與那原大剛 投 普天間高・(1軍出場なし)※
4位・宇佐見真吾 捕 城西国際大学・21試14安4本8点0盗 打率.350※
5位・山本泰寛 内 慶應義塾大学・56試32安1本9点1盗 打率.222※
6位・巽大介 投 岩倉高・(1軍出場なし)※
7位・中川皓太 投 東海大学・0勝0敗0S0H 防御率5.00
8位・松崎啄也 内 日本製紙石巻・(1軍出場なし)※
育1位・増田大輝 内 徳島インディゴソックス・(1軍出場なし)※
育2位・小林大誠 捕 武蔵ヒートベアーズ・(1軍出場なし)
育3位・松澤裕介 外 香川オリーブガイナーズ・(1軍出場なし)※
育4位・田島洸成 内 武蔵ヒートベアーズ・(1軍出場なし)※
育5位・大竹秀義 投 武蔵ヒートベアーズ・(1軍出場なし)※
育6位・山下篤郎 投 鎮西高・(1軍出場なし、15年オフから登録名は橋本篤郎)※
育7位・矢島陽平 投 武蔵ヒートベアーズ・(1軍出場なし)※
育8位・長谷川潤 投 石川ミリオンスターズ・0勝1敗0S0H 防御率8.53※

 合計16人もの選手を獲得。1位桜井は中継ぎ投手として期待が掛かる。2位の重信は引退した鈴木尚広にかわる「足のスペシャリスト」候補だ。今季は4位宇佐見が打てる捕手としてシーズン後半に浮上。5位の山本は守備を武器に1軍出場を果たしている。

○2016年
1位・吉川尚輝 内 中京学院大学・5試3安0本0点1盗 打率.273※
2位・畠世周 投 近畿大学・6勝4敗0S0H 防御率2.99※
3位・谷岡竜平 投 東芝・0勝1敗0S0H 防御率12.00※
4位・池田駿 投 ヤマハ・0勝2敗0S4H 防御率3.35※
5位・高田萌生 投 創志学園高・(1軍出場なし)※
6位・大江竜聖 投 二松學舍大学附属高・(1軍出場なし)※
7位・廖任磊 投 開南大学・(1軍出場なし)※
育1位・高井俊 投 新潟アルビレックスBC・(1軍出場なし)※
育2位・加藤脩平 外 磐田東高・(1軍出場なし)※
育3位・山川和大 投 兵庫ブルーサンダーズ・(1軍出場なし)※
育4位・坂本工宜 投 関西学院大学準硬式野球部・(1軍出場なし)※
育5位・松原聖弥 外 明星大学・(1軍出場なし)※
育6位・高山竜太朗 捕 九州産業大学・(1軍出場なし)※
育7位・堀岡隼人 投 青森山田高・(1軍出場なし)※ 
育8位・松澤裕介 外 香川オリーブガイナーズ・(1軍出場なし)※

 この年も大量15人を指名。その中では、2位の畠が今季後半の先発ローテを担い、活躍した。池田駿も中継ぎ左腕として活躍した。

○2017年
1位・鍬原拓也 投 中央大学
2位・岸田行倫 捕 大阪ガス
3位・大城卓三 捕 NTT西日本
4位・北村拓己 内 亜細亜大学
5位・田中俊太 内 日立製作所
6位・若林晃弘 内 JX-ENEOS
7位・村上海斗 外 奈良学園大学
8位・湯浅大 内 高崎健康福祉大学高崎高
育1位・比嘉賢伸 内 盛岡大学附属高
育2位・山上信吾 投 常磐高
育3位・笠井駿 外 東北福祉大学
育4位・田中優大 投 羽黒高
育5位・広畑塁 捕 立正大学
育6位・小山翔平 捕 関西大学
育7位・折下光輝 投 新野高
育8位・荒井颯太 外 関根学園高

 こうしてみると、大量に選手を獲得しているが、「相思相愛」のドラフト1位選手を除けば主力に育った選手は数少ないことが分かる。FA選手や外国人選手の補強が多く、1軍の層が厚いことが原因だが、他球団へ移籍した後に活躍した選手が多いことを見ても、いい素材は揃っている。3軍まで編成して育成に力を入れているだけに、若手選手にもう少しチャンスが与えられると開花する可能性はありそうだ。

(Full-Count編集部)

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