ドラフトでの“的確補強”こそ躍進の原動力 DeNA過去10年のドラフト査定

2009年のドラフトでDeNAに1位指名された筒香嘉智【写真:荒川祐史】

ほとんどの年で複数の指名選手が主力に成長、今季PSでも多くの選手が活躍

 DeNAはここ10年で86人の選手をドラフトで獲得している。顔ぶれを見ると、去年、今年のポストシーズンで活躍した選手が多い。

 過去10年のドラフトの実績を振り返ろう。※はNPBで現役。

◯2008年
1位・松本啓二朗 外 早稲田大学・302試119安7本45点 5盗 打率.235※17年戦力外
2位・藤江均 投 東邦ガス・12勝14敗1S45H 防御率4.17 楽天へ
3位・山崎憲晴 内 横浜商科大学・412試171安6本56点 7盗 打率.218 阪神へ
4位・細山田武史 捕 早稲田大学・203試59安1本25点 2盗 打率.171 ソフトバンクへ
5位・小杉陽太 投 JR東日本・6勝9敗0S2H 防御率5.04

 1位の松本は期待されたが、レギュラーになれず。今オフ、戦力外を通告された。3位の山崎も戦力外になり、トライアウトを受けて阪神入団が決まった。細山田は1年目88試合に出場したが、ソフトバンクを経て今は社会人トヨタ自動車でプレーしている。

◯2009年
1位・筒香嘉智 内 横浜高・698試705安138本445点 5盗 打率.286※
2位・加賀繁 投 住友金属鹿島・12勝22敗1S71H 防御率3.92※
3位・安斉雄虎 投 向上高(1軍出場なし)
4位・眞下貴之 投 東海大学付属望洋高・1勝1敗0S0H 防御率4.01
5位・福田岳洋 投 香川オリーブガイナーズ・0勝0敗0S1H 防御率5.35
育1位・国吉佑樹 投 秀岳館高・12勝22敗3S14H 防御率3.58※
育2位・小林公太 投 多摩大学附属聖ヶ丘高(1軍出場なし)

 この年の1位が、主軸の筒香だった。加賀繁、育成1位の国吉も現役だ。育成2位の小林公太は退団後、女子野球の片岡安祐美と婚約し、話題になった。

◯2010年
1位・須田幸太 投 JFE東日本・16勝19敗1S35H 防御率4.71※
2位・加賀美希昇 投 法政大学・5勝10敗0S0H 防御率4.32
3位・荒波翔 外 トヨタ自動車・511試410安10本96点 62盗 打率.263※
4位・小林寛 投 大阪学院大学・2勝3敗0S1H 防御率3.39※17年戦力外
5位・大原慎司 投 TDK・10勝3敗2S55H 防御率3.26
6位・福山博之 投 大阪商業大学・16勝11敗9S88H 防御率2.75 楽天へ※
7位・大原淳也 内 香川オリーブガイナーズ・1試0安0本0点 0盗 打率.000
8位・鶴岡賢二郎 捕 愛媛マンダリンパイレーツ・24試12安0本2点 0盗 打率.267
育1位・松下一郎 捕 関西外国語大学(1軍出場なし)

 現役選手が多いが、活躍している選手は少ない。6位の福山はDeNAでは21試合の登板にとどまったが、2013年に移籍した楽天では、絶対的な信頼感のあるセットアッパーとして活躍している。

2012年は豊作、13年のドラ1柿田は今オフ戦力外に

◯2011年
1位・北方悠誠 投 唐津商業高(1軍出場なし)ソフトバンクへ
2位・高城俊人 捕 九州国際大学付属高・284試98安1本30点 0盗 打率.174※
3位・渡邊雄貴 内 関西高(1軍出場なし)
4位・桑原将志 内 福知山成美高・397試349安26本119点 34盗 打率.265※
5位・乙坂智 外 横浜高・196試72安7本22点 5盗 打率.237※
6位・佐村トラヴィス幹久 投 浦添商業高(1軍出場なし)
7位・松井飛雄馬 内 三菱重工広島・83試31安2本11点 1盗 打率.189※
8位・古村徹 投 茅ヶ崎西浜高(1軍出場なし)
9位・伊藤拓郎 投 帝京高・0勝0敗0S1H 防御率0.00
育1位・冨田康祐 投 香川オリーブガイナーズ・0勝0敗0S0H 防御率27.00
育2位・西森将司 捕 香川オリーブガイナーズ・35試2安0本1点 1盗 打率.061※

 1位の北方は快速球投手だったが、登板機会がないまま引退。2位の高城は、今年のCSではしぶとい打撃を見せた。4位の桑原は外野手に登録変更し、今季はリードオフマンとして活躍。5位の乙坂もいいところで代打に起用された。

◯2012年
1位・白崎浩之 内 駒澤大学・355試158安13本37点 6盗 打率.219※
2位・三嶋一輝 投 法政大学・13勝18敗0S1H 防御率4.90※
3位・井納翔一 投 NTT東日本・34勝45敗0S2H 防御率3.89※
4位・赤堀大智 外 セガサミー・6試1安0本1点 0盗 打率.125
5位・安部建輝 投 NTT西日本・0勝1敗0S0H 防御率4.20
6位・宮崎敏郎 内 セガサミー・325試302安29本113点 0盗 打率.302※
育1位・今井金太 投 広島国際学院高(1軍出場なし)

 この年は豊作。1位の白崎は今季、ポジションを失ったものの、日本シリーズで本塁打を打って気を吐いた。2位の三嶋は今季から救援へ。3位の井納は先発の柱として活躍中。そして6位の宮崎は開幕直後に一時離脱はあったものの、首位打者を獲得。完全に主軸選手になった。

◯2013年
1位・柿田裕太 投 日本生命(1軍出場なし)※17年戦力外
2位・平田真吾 投 Honda熊本・0勝3敗0S5H 防御率4.68※
3位・嶺井博希 捕 亜細亜大学・147試82安8本44点 0盗 打率.246※
4位・三上朋也 投 JX-ENEOS・7勝12敗23S85H 防御率2.96※
5位・関根大気 外 東邦高・157試58安1本18点 13盗 打率.212※
6位・山下峻 投 松本大学(1軍出場なし)
育1位・砂田毅樹 投 明桜高・6勝9敗0S25H 防御率3.64※
育2位・萬谷康平 投 ミキハウスREDS・2勝1敗0S4H 防御率3.21

 1位の柿田は今年戦力外になり、トライアウトにも出場。3位の嶺井は2番手捕手。4位の三上はセットアッパーとして活躍している。育成の砂田も今季セットアッパーとして売り出した。

2014年は大当たり、2015年も左のエースと正捕手が加入

◯2014年
1位・山崎康晃 投 亜細亜大学・8勝11敗96S29H 防御率2.35※
2位・石田健大 投 法政大学・17勝16敗0S0H 防御率3.16※
3位・倉本寿彦 内 日本新薬・386試341安5本108点 5盗 打率.265※
4位・福地元春 投 三菱日立パワーシステムズ横浜・0勝1敗0S0H 防御率5.64※
5位・山下幸輝 内 国学院大学・106試35安0本9点 3盗 打率.217※
6位・百瀬大騎 内 松本第一高(1軍出場なし)※
7位・飯塚悟史 投 日本文理高・1勝3敗0S1H 防御率4.29※
育1位・亀井塔生 捕 日星高(1軍出場なし)※

 この年も当たり年。クローザーの山崎は、今やリーグを代表する存在になりつつある。2位の石田も先発投手として活躍。3位の倉本は今季は遊撃手としてフル出場した。

◯2015年
1位・今永昇太 投 駒澤大学・19勝16敗0S0H 防御率2.95※
2位・熊原健人 投 仙台大学・4勝2敗0S0H 防御率5.14※
3位・柴田竜拓 内 国学院大学・107試58安1本13点 2盗 打率.228※
4位・戸柱恭孝 捕 NTT西日本・236試155安11本75点 0盗 打率.220※
5位・綾部翔 投 霞ヶ浦高・1勝0敗0S0H 防御率0.00※
6位・青柳昴樹 外 大阪桐蔭高(1軍出場なし)※
7位・野川拓斗 投 鷺宮製作所・0勝0敗0S0H 防御率2.57※
育1位・網谷圭将 捕 千葉英和高(1軍出場なし)※
育2位・山本武白志 内 九州国際大学付属高(1軍出場なし)※
育3位・田村丈 投 関西学院大学卒(1軍出場なし)※

 今永は今や左のエース。日本シリーズでも快投を見せた。3位の柴田は今季後半戦、二塁手として起用された。4位の戸柱は正捕手になった。

◯2016年
1位・濱口遥大 投 神奈川大学・10勝6敗0S0H 防御率3.57※
2位・水野滉也 投 東海大学北海道キャンパス・0勝1敗0S0H 防御率5.79※
3位・松尾大河 内 秀岳館高(1軍出場なし)※
4位・京山将弥 投 近江高(1軍出場なし)※
5位・細川成也 外 明秀学園日立高・2試2安2本4点 0盗 打率.400※
6位・尾仲祐哉 投 広島経済大学・1勝1敗0S0H 防御率6.52※
7位・狩野行寿 内 平成国際大学(1軍出場なし)※
8位・進藤拓也 投 JR東日本・0勝0敗0S0H 防御率4.20※
9位・佐野恵太 内 明治大学・18試2安0本1点 0盗 打率.095※
育1位・笠井崇正 投 信濃グランセローズ(1軍出場なし)※

 1位の濱口は新人王こそ逃したが、10勝を挙げ特別表彰。5位の細川はプロ入り初打席本塁打、しかもその試合でスリーランも打つというド派手なデビューを飾った。

2017年
1位・東克樹 投 立命館大学
2位・神里和毅 外 日本生命
3位・阪口皓亮 投 北海高
4位・齋藤俊介 投 JX-ENEOS
5位・櫻井周斗 投 日本大学第三高
6位・寺田光輝 投 石川ミリオンスターズ
7位・宮本秀明 内 パナソニック
8位・楠本泰史 内 東北福祉大学
9位・山本祐大 捕 滋賀ユナイテッドBC
育1位・中川虎大 投 箕島高

 ほとんどの年のドラフトで、主力選手が複数育っている。今のDeNAの躍進は、ドラフトで獲得した若い選手が期待にたがわず活躍していることが大きい。育成枠からも選手が育っている。

 ラミレス監督は若手を思い切って起用し、結果が出るまで辛抱強く使うことでチーム力を充実させている。2017年ドラフトの選手からも、すぐに活躍する選手が出るのではないか。

(細野能功 / Yoshinori Hosono)

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