浦賀奉行所跡地を譲渡 横須賀市へ

 幕末の江戸湾防備などを担った「浦賀奉行所」の跡地(横須賀市西浦賀5丁目、約6700平方メートル)が、所有者の住友重機械工業(東京都品川区)から市に無償で寄付されることになった。跡地にはかつて同社の川間社宅が建っていたが、現在は撤去されている。2020年は奉行所開設300年の節目に当たり、市は地元の意見を聞きながら土地の活用方法を検討する。

 上地克明市長が同社の別川俊介社長と面会して合意した。年内にも契約を締結する見通し。上地市長は28日の会見で「日本の近代史に残る浦賀奉行所の跡地がきれいに整備され、寄付していただけることは大変喜ばしい」と述べた。

 一方で上地市長は、03年に閉鎖された近くの浦賀工場跡地の活用を巡り、別川社長から「長期にわたり手を付けないことは好ましくなく、市の意向を尊重し、敷地全体の処分を目指す」との発言があったことも明らかにした。これについて上地市長は「跡地の利活用は市の大きな課題であり、話が進展することは大変喜ばしい。なるべく早く土地の利活用を目指したい」とも述べた。

 旧川間社宅は鉄筋4階建ての建物3棟(計128戸)で1966〜70年に整備された。旧浦賀工場の従業員らが使用していたが、社宅も2013年3月に閉鎖した。

 老朽化が進んでいた建物は、地元住民らが「廃虚となった建物が歴史の町・浦賀のイメージを損なっている」として市を通して撤去を申し入れ。今年6月に解体工事がスタートし、現在は全て取り壊され、更地になっている。

 社宅の位置には1720(亨保5)年、伊豆下田から移設した奉行所が開所。1868(慶応4)年までの約150年間、江戸湾防備などの拠点となった。周囲には奉行所を取り囲む堀の石垣が残るほか、跡地を示す看板が立つ。地元では奉行所開設300年の節目に合わせ、当時の建物の復元を求める動きも出ている。

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