2019年にデビュー50周年を迎える井上陽水。リリースされる楽曲の完成度の高さは言わずもがなだが、じつは彼の本懐はライブにこそある、というのは、会場へ足を運んだことのあるファンなら誰もがうなずくところだろう。そんな彼の、ライブ映像のベスト盤に位置するのが本作である。
30周年の東京国際フォーラム、40周年の日本武道館はもちろんのこと、2017年5月に昭和女子大学人見記念講堂で行われたとれたての映像まで、振れ幅たっぷりに収録。またいくつかのTV番組内でのパフォーマンスも初めて商品化されており、1997年、TBS「筑紫哲也NEWS23」内で歌われた『最後のニュース』では、当時の時代の匂いさえもふいに蘇ってきて、思わず胸が熱くなった。
ボーナス映像は、2007年奥田民生を迎えたZepp TOKYOでの『ありがとう』、そして1986年、安全地帯とともに熱演した『夏の終りのハーモニー』。そう、陽水さんはセッションもいい。独特の間、ひょうひょうとしているように見えるのに、その歌声に、演奏に、いつしか観客は熱くなる。そんないつかのライブ体験をまざまざと思い出した。
また次の10年の大活躍を予感させる、エネルギーに満ちた一本。しかも選曲はヒット曲ぞろいだから、入門編としてもおすすめだ。
(ユニバーサル ミュージック・4259円+税)=玉木美企子