遺族に対する給付は大きく分けて3つ
公的年金には、リタイア後の生活保障の他に、家計の大黒柱に万が一のことがあった際に残された遺族に給付を行う「遺族保障」機能があります。リタイア後の給付である「老齢給付」に比べ、「遺族給付」の認知度は低いのが現状のようですが、万が一の保障機能についても是非知っておきたいところです。遺族に対する給付の種類ついては、亡くなった大黒柱の当時の職業によって受け取れる給付が決まります。おおざっぱに言うと、
■自営業者等(国民年金のみに加入している場合)
遺族基礎年金、寡婦年金、死亡一時金
■会社員、公務員
遺族基礎年金、遺族厚生年金
となります。それぞれ中身を見てみましょう。
※尚、公務員の方について、2015年9月末までに受給権が発生している場合は、「遺族基礎年金、遺族「共済」年金」となります。
遺族厚生年金は「夫婦年金」
会社員、公務員が加入する厚生年金から支給される年金を「遺族厚生年金(公務員の方が2015年9月末までに受給権が発生している場合は「遺族共済年金」)といいます。この厚生年金と共済年金については、多少の違いはあるものの、基本的な仕組みは同じです。そこで、厚生年金のほうを見てみたいと思います。
遺族厚生年金を受け取れる遺族は、
・妻又は子
・夫
・父母
・孫
となり、このうちの最先順位者に支給されることになります。典型的な例としては、家計の大黒柱である「夫」が死亡したときに、残された「妻」が受け取るという形でしょう。「妻」が再婚等しない限り、妻が亡くなるまで支給されます。
しかし、夫婦共元気でリタイアするケースが多いと思います。老齢厚生年金を受け取っている夫が先立った場合、残された妻に遺族厚生年金と名を変えて支給が続きます。そういう意味では「夫婦年金」と言えるかもしれません。
遺族基礎年金は、「子育て年金」
一方国民年金から支給される遺族年金(遺族基礎年金)はどんな年金と言えるのでしょうか?遺族基礎年金を受け取れる遺族は「(子のある)配偶者」又は「子」に限られます。
配偶者についても、子供がいることが要件となり、子供が一定年齢(通常18歳年度末)で支給が打ち切られます。18歳年度末と言えば、高校を卒業する時期です。要は子供が育つまで支給されるということで、「子育て年金」とも言えるでしょう。
ここで問題となるのが、自営業者等国民年金のみに加入している方々(第1号被保険者)です。会社員に支給される遺族厚生年金は支給されません、一定年齢までの子供がいない場合は遺族基礎年金も支給されないことになります。
保険料を払ってきたのに、何も受け取れないというのはちょっと理不尽ですね。国はこういった「掛捨て」を防ぐために第1号被保険者のみに支給する制度を2つ用意しています。
掛捨て防止のための2つの遺族給付とは?
国は先ほどの「掛け捨て防止」のため以下の2つの制度を用意しています。
・寡婦年金
・死亡一時金
寡婦年金は保険料を25年掛けること。死亡一時金については3年以上掛けることが要件のひとつとなっており、受け取れる遺族については寡婦年金は「妻のみ」、死亡一時金は配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の最先順位となります。
寡婦年金は、残された妻が60歳から65歳までの5年間の有期年金で、死亡一時金は、文字通り1回きりの支給となります。いずれにしても、万が一のことがあった際にはどの給付が貰えるのかしっかり確認したいものです。