SNSで人気沸騰、CAエッセイ漫画「クルござ」がおもしろい!

秋田書店からコミックス「CREWでございます!」も発売中です

 「キャビンアテンダント、皆様はどのようなイメージをお持ちですか?」。女子なら一度は憧れた経験があるかもしれない「キャビンアテンダント(CA)」。CAをはじめとする航空業界で働く人たちの〝真の姿〟に迫るエッセイ漫画「CREWでございます!」(通称クルござ)が話題です。

執筆しているのは、元CAでスチュワーデススクール講師も務めたという異色の経歴を持つ御前モカさん。「カードキャプターさくら」などで知られる人気漫画家集団CLAMPのストーリー担当である大川七瀬さんが「冬眠から目覚めて思わずTwitterにアップしてしまうくらい、面白かった」と絶賛するなど話題となり、連載中のWEBコミック雑誌「チャンピオンクロス」でも現在上位の閲覧数を誇っています。

CA合コンでは完璧なチームワークが発揮されるそうです
コックピットの内部の描写にもこだわりが…

 「CREWの本当の姿、やりがいを知っていただき、未来のCREWをめざしてほしかったのです」と、モカさん。これまでドラマや映画で多く描かれてきたCAですが、強い違和感を覚えてきたといいます。よりリアルな姿を伝えるべく、執筆の際は、自身の経験のみならず現役CAの友人にも取材し、機材の描写を含めて最新情報を反映するそうで、「LCC系を除いて、外資系を含めた日本人が乗務する大手航空会社のほぼすべてに、協力してくれる知人友人がおります」。記者も脱帽の取材ネットワークです。

 そんなモカさんが、もっとも慎重に描いているのが「安全」。「CREWは飲み物や料理を配る機内サービスも行いますが、実は保安要員。万一のときには命を張ってでも、お客様を守るのが仕事の本分であり、一番のやりがいなのです」と強調します。

 きっかけは、2016年2月23日に北海道・新千歳空港で起こった日本航空機の事故。誘導路を走行中にエンジントラブルが発生し、煙が機内に充満し、乗客らが緊急脱出しました。ニュースを見ていたモカさんは、手荷物を持って逃げる多くの乗客を見て「非常にショックでした」と振り返ります。緊急脱出は身一つで行うのが鉄則。機体の爆発から逃げ遅れたり脱出用シューターが破損したりといった事故につながる危険があるためです。1分以内に乗客を脱出させなければならないという緊迫した状況下、乗客を必至に説得するCREWの姿が目に浮かんだそうです。

 「危険性をその場でパニック状態のお客様に伝えることは、恐怖感を煽るため難しい。日頃航空会社が発信してきたことが、こんなに理解されていなかったとは」。モカさんはその日徹夜で漫画を執筆、「緊急脱出とは何か」ツイッターで翌朝発信しました。ツイッターでは「わかりやすい」「安全のしおりに使ってほしい」などの声が上がり、漫画は後にWEBやコミックスにも掲載され、多くの反響を集めました。

タイムリーに発信された緊急脱出の特別回

 ツイッターのフォロワーや読者をモカさんは「大切なチーム」と呼びます。連載当初から熱心にファンと交流し、飛行機に乗り慣れない人たちの意見や疑問を作品にも反映しています。航空系のニュースは常にチェックし、安全に関する誤った情報が拡散していれば、すぐに反応します。強い思い込みがある人へもあきらめず丁寧に説明する姿勢は、さながら〝地上のCA〟です。

 「初フライトのヒヨコ(乗務員)でさえ、たった1人でもお客様を脱出させる技術を持っています。プロとして信頼してほしい」とモカさん。作品を通じて、一人でも多くの乗客が安心し、かつ安全に空の旅を楽しめることを願っています。

ファンからのプレゼントに囲まれたデスク。タブレットで執筆します(モカさん撮影)

 モカさんには実は、今後取り組みたい作品の構想があるようです。クルござに登場する人気キャラクターの1人、心が女性の男性CREW「ルウ姐」を主人公にした作品で、ファッションや世界の名品、その歴史などを紹介するのだそうです。世界中を旅するCAは流行にも敏感。REMOWAなどCAが愛用したことで世界のトレンドになった名品も少なくありません。CAさんしか知らない隠れた良品が登場しそうで、とても楽しみですね。

Image Credit:御前モカ(秋田書店)

【CREWでございます!】
2015年プリンセスGOLD7月号(6月発売)で連載開始
→WEBコミック雑誌「チャンピオンクロス」連載中(毎月第2火曜日更新)
※プリンセスGOLDは不定期掲載
http://chancro.jp/comics/crew

書籍版(秋田書店、いずれも税別830円)
CREWでございます! スチュワーデスお仕事日記
CREWでございます! 燃える! ! スチュワーデス物語

© 株式会社産業経済新聞社