《東京#CODE》#メイク男子の取り扱い説明書

illustration: Shogo Sekine

 最近よくヘアセットをしに"アトリエはるか"というセット&メイクのみのサロンを利用します。駅ナカにあって、移動の途中にパパッとヘアセットをお願いできるので、ちょっとしたパーティーのときにとても便利です。しかも、1回3000円程度と早くて安い。まさにヘアサロンの吉牛(ヨシギュウ)です。ここでは眉カットもできます。メンズもレディスも利用できるシステムです。とはいえ、やはりサロンのスタッフは全員女性。お客さんもほぼ女性という館に、先日、男子がひとりやってきました。眉カットの説明を受けているのですが、初回のようです。

 お姉さまとしては横目で見つつ老婆心ながら、大丈夫かなー、おどおどしていないかなーと心配になるわけです。その彼は普通の大学生風で、とりたててホスト系でもなく、小ぎれいでカジュアルな普通の男子。では、何が心にひっかかったのかというと、女子のヘアサロンで物怖じしない男子を見たときの、自分の驚きそのものだったのです。

 眉カットに来る男子を軽く好奇の目で見ているのではないだろうか、という疑惑。今までの連載を読んでいただいている方にはおわかりだと思うのですが、私自身は男女平等、ジェンダーギャップをなくそう!と思っている人です。そんな自分が眉カット男子に好奇の目を向けるとは、なんたることか! つまり、女子が男子領域に入ることは" どんどんいきましょう!"って言っているくせに、男子が女子領域、特に女子のメイクルーム領域に来ると、なんだかんだまだまだ違和感を覚えていたのですね。反省。

 こんなこともありました。ファッション系専門学校に行った時、そこにとてもきれいな男子がいました。男子、というかゲイ男子ですね。彼のファッションはまさにジェンダーレス。肌がつるつるで、メイクもしています。アイライン、アイブロウ、まつげエクステもしていました。女子的というより、韓流スターみたいな感じ。普通にきれいだなーと思いました。話を聞くと、女子以上にメイクに詳しくて、コンシーラーでちゃんとヒゲの剃り跡を隠すことも忘れません。最近ノンケ男子にもヒゲ脱毛している友人が増えてますしね。

 で、何が言いたいかと言うと、こういうメイク男子に会ったときに驚かず普通でいましょう、ということです。つまり昔、男女平等の名の下に、女子はかつて、男子の領域であった場所にいろいろずかずかと入って行ったのだと思うのです。男子校を共学にしたり、女人禁制のお寺も女性に解放したり。そうやって女子が男子の扉を開けたのと同じように今、男子もまた女子の扉をあけようとしています。ヒールのある靴をはきたい、ファンデ塗りたい、まつげエクステしたい、ジェルネイルしたい。いいじゃないですか。

 メンズコスメもやっと本格的に売れ始めているようです。香港や韓国ではメンズのメイクブックも当たり前。メンズコスメの先行例としては、資生堂MENシリーズも今や定番です。

 先日党首討論会を見ていた時に思ったのは、小池さんの化粧の濃さはさておき、おじさんたちの顔色が冴えないこと。ちょっとでもファンデーションを塗れたら、もう少しましに見えるんじゃないかしら、と。女子の特権もちゃんと男子に解放すること。これでこそ、ジェンダーフリーな社会ですね。

THIS MONTH'S CODE

#アトリエはるか

全国の駅ビルなどに入っている髪を切らないヘアサロン。メイクや着付けサービスなどもあり、10分程度からできる手軽さも人気。

#ヒゲ脱毛している友人

社会学者の古市憲寿氏は顔の永久脱毛をしていると番組で告白。「ひげを剃る時間って無駄じゃないですか」と。納得。

#資生堂MENシリーズ

ローションやクレンジングなどが中心のメンズコスメの代表格。韓国系ではメンズ用のBBクリームなども。

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