【工場ルポ】〈JFEスチールのベトナム販売合弁パートナー建材加工のアグリメコ〉最新鋭設備を導入、高い生産性が武器 国内外案件を積極受注、加工量倍増目指す

 【ハノイ発=村上倫】JFEスチールのベトナム・ハノイにおける建材加工商品販売合弁、アグリメコ&JFEスチールプロダクツ(A&J、社長・上原郁氏)は共同出資するベトナム有数の建設・加工会社、アグリメコが鋼材加工を担う。アグリメコの本社工場を取材した。

 A&Jは今年2月にJFEスチールとアグリメコが50%ずつを出資して設立された。資本金は約2億円で、社長を含め社員は7人。本社はハノイ中心部から南に位置するアグリメコのヘッドオフィスに設けられた。

 JFEスチールの材料供給を受けアグリメコグループが鋼材加工を行い、A&Jが建材販売を行うのが基本スキーム。加えてA&Jがアグリメコグループに技術協力を行い、建材販売のほか機械設備の製作や据付、建設工事なども行っていく。対象の建材製品はビルトH形鋼、ボックスコラムなど鉄骨製品と発電所・プラント設備、水道管、橋梁、仮設材加工、床デッキと幅広い。

 アグリメコの設立は1958年にさかのぼり、国有企業の農業・灌漑・機械の専門会社としてスタート。2013年に民営化された。現在でも水力・火力発電所の建設や設備を手掛け、6社・9カ所で水力発電所の運営管理会社も所有・経営している。グループはベトナム国内に25社。ハノイの本社工場の鋼材加工量は年間3万トン程度で、ホーチミンにも同2万トン程度の加工が可能な加工拠点を有する。

 アグリメコのレ・ヴァン・アン社長は「将来的には鋼材加工工場をさらに5カ所増やしたい」と意欲的だ。既にハノイ近郊のハイズオン市にあったアグリメコの電気工場の跡地に、年間3万トン規模の加工工場を建設する計画に着手。既に機械設備は発注しているという。

 本社工場は敷地面積約5万平方メートル。主に厚板加工ラインとロールH形鋼などの切断・孔開けラインから構成される。厚板加工ラインは台車上で厚板をガス切断できる設備で、切断した厚板を溶接してビルトHやボックスコラムを組み立て孔開けなどを行う。

 足元では約3年前、JFEとの合弁設立前にハノイで受注した「ビエンティンバンクタワープロジェクト」向けの鉄骨加工が盛ん。タワーは地上363メートル、RC造中心のベトナムではまだ珍しいSRC造で鉄骨約3万トンを使用する大型案件だ。アグリメコではこれに対応した切断機や溶接機械などさまざまな設備を導入している。溶接機はイタリア製で、ダブルトーチにより一度に2カ所を溶接できる生産性の高い設備。ダブルトーチは同国では珍しく、日本のファブリケーターも感嘆する設備だという。

 民営化を機に最新鋭の設備を次々と導入していることも特長。一度に3方向からH形鋼の孔開けができる3D孔開け機や水・油が不要な厚板の孔開け機など、効率化が進んだ工場となっている。エンジニア出身のアン社長はアイデアマンでもあり、台車とクレーンの線路は交差できるようになっているほか、溶接や検査のための反転機なども考案した。

 本プロジェクトの梁として使用されるメガトラスは高さ11メートル、幅54メートルの鋼構造物。1基当たりの鋼材重量は約1千トンで計9基を組み立てる。9万個に及ぶボルト孔は誤差3ミリの精度で孔開けが行われ、工場で実際に仮組みを行い現場には再び分解して搬入する。また、塗装ネックを解消するべく今年度にショットブラストを新たに導入している。

 「日本式に比べれば安全面など改善の余地はまだ大きい」と上原A&J社長。ベトナムにおけるODA案件や海外の鉄骨案件などを積極的に受注し稼働率を向上させ「当社としての加工量を倍増させたい」と意気込む。

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