芝浦工業大学、アルミ表面処理で新技術 水蒸気活用し高強度、高耐食に

 芝浦工業大学は28日、アルミ材料の高強度と高耐食化を両立する表面処理技術を開発したと発表した。高温・高圧下の水蒸気を活用する技術で、処理前のアルミ材に比べて耐食性が100分の1程度、強度も1・5~2倍向上。従来の薬品による耐食性の強化に比べて環境負荷やコスト低減にもつながる。今後、産学連携を加速させ、数年以内に自動車部材や電化製品などの分野での実用化を目指す。

 材料工学科の芹澤愛准教授が開発した新技術は、高圧・中低温の水蒸気下にさらすだけで材料の強度と耐食性を同時に向上させるもの。蒸気を活用することで化学反応を早く進行させ、金属表面に緻密な耐食性皮膜を直接成長させるプロセス。蒸気は細部まで行き渡るため、反応容器に入るものであれば複雑形状部材や大型部材にも適用可能で、自動車材料や熱交換器への適用が期待される。

 水蒸気プロセスによる表面処理では、大きな面積かつ複雑な形状の処理が可能となるほか、化学薬品による前処理が不要となる。また蒸気を活用し、耐食性ナノ結晶成長にかかわる化学反応を制御することで、金属材料表面に微細な結晶を緻密に形成できることから圧力・温度の条件により、結晶構造をコントロールすることも可能。表面皮膜は耐食性だけでなく高強度化も両立できる。

 今後の実用化に向けては、水蒸気プロセス条件の最適化や大量生産・低コストプロセスの改良などの課題とされている。金属の高強度化を目指す企業などとの共同研究を通じて、実用化の実現を加速させる方針を示している。

© 株式会社鉄鋼新聞社