「フットサルが決定力不足を救う?永井義文が杉本健勇の超ゴールを徹底解説!」

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突然ですが、今回のコラムはいつものテーマから離れます。

題して「フットサルが決定力不足を救う?永井義文が杉本健勇の超ゴールを徹底解説!」。

Qolyさんに名付けてもらったタイトルに恐縮していますが、「シュートやゴールが決めることが苦手な子供たちや育成年代の選手」に向けたアドバイスになればと思い、書いてみることにしました。

タイトルを見ただけでは「なぜフットサルが決定力不足を救えるのか?」と疑問を感じる方もいるかと思いますが、その点は後述します。

さて、今回その題材として選んだのは、今季絶好調であるセレッソ大阪の杉本健勇選手が見せた(J1第14節)対サンフレッチェ広島戦でのゴールです。

「自陣から独走」というインパクトもあって大きな話題を集めたゴールなので、印象に残っている人も多いかもしれませんが、ここではシュートシーン限定してフォーカスを当てたいと思います。

ずばり、そのシュートシーンにおけるポイントは大きく分けて三つ。

「なぜ、日本代表経験者である二人の選手(林卓人、水本裕貴選手)を相手にして、ミドルレンジからでもゴールを奪えたのか」という点でも興味深いゴールでしたが、その秘密もこの三つのポイントから紐解けるので、そのポイントを一つずつ見ていきましょう。

1.あえてゴールキーパーを見ない

まず一つ目のポイントですが、それは「あえてゴールキーパーを見ない」という点です。

このゴールに至る途中、杉本健勇選手はボールを運んでいる時(キックフェイントをいれる前)に、ゴールとゴールキーパーの位置も遠目で確認していましたが…ここから面白いポイント。

実は、杉本選手はそのプレー後からシュートを打つまでの間、ゴール方向に対して全く視線を向けていないのです。

「シュートを打つ際、ゴールやゴールキーパーの位置を見よう」という教え方はよく聞くと思います。

育成年代で言えば、指導者たちもその言葉を度々使っているのではないでしょうか。

ですが、「ゴールキーパーを見る」ということにデメリットが存在することも忘れてはいけません。

それは「ゴールキーパーを見る」ことにより、シュートを打つタイミングやコースを察知するためのヒントと時間を与えてしまうという問題です。

優れたゴールキーパーになればなるほど、シューターの動作には目を凝らしています。

そのため、シュート時に何気なく行う視線移動だけでも、彼らにとってはプレーの判断材料になり得るのです。

つまり、このシーンでは「あえてゴールキーパーを見ない」という選択を行い、杉本選手はそれらのデメリットを回避したことになります。

立場を変えると、このちょっとしたプレーにより、林選手はそのプレー判断が不確実なものになったとも言えるでしょう。

これが一つ目のポイントです。

2.キックフェイント

続いてのポイントですが、それは「シュートを打つ前にいれたキックフェイント」にあります。

このワンモーションにより、サンフレッチェ広島の守備陣に対して二つの影響を与えました。

一つ目は「シュートブロックに動いていたDFの水本選手の歩幅を狂わせた」こと。

そして、二つ目は「GKの林選手にいつシュートを打つかを迷わせた」ことです。

これは最後のポイントにも繋がるので、その説明は後述します。

3.股抜きシュート

ゴールの決め手となった最後のポイントですが、それは杉本選手が試みた「股抜きシュート」でした。

ここで改めて、ゴールに至るまでのプロセスを振り返りましょう。

まず、杉本選手は、前述のキックフェイントで、水本選手の歩幅をずらすことに成功しました。

これにより、水本選手はシュートブロックを試みようとスライディングを行ったものの、その対応に"遅れ”が発生します。

そして、その“遅れ”を活かす形で杉本選手は「股抜きシュート」を狙い、ボールは水本選手の股を抜けて…というのがゴールまでの過程でした。

ですが、このゴールシーンを見た時、このように感じた人がいたのではないでしょうか。

「なぜ、GKの林選手はシュートを防げなかったのか」と。

この問いに対しては、林選手が受けた影響を個別に振り返ってみるとその答えが見えてきます。

①(杉本選手が)キックフェイントが行ったこと

②(杉本選手が)キーパーを見ずにシュートを打ったこと

林選手は、これら①と②の効果で「シュートタイミングが掴めない」という影響を受けました。

これはいかなるゴールキーパーでも大きなダメージとなるため、林選手レベルであっても、その影響度はかなり高かったと考えられます。

そして、追い討ちとなったのが以下。

③(杉本選手)が股抜きシュートを狙ったこと

です。

この③で、一瞬「ブラインド状態」に陥ることなり、ステップの“遅れ”が発生。これで止めを刺された林選手は、最終的に失点を許してしまったというわけです。

通常、あの距離からシュートを打ったところで、なかなかゴールは生まれません。

仮に練習時にフリーの状態であっても、日本代表経験のあるようなゴールキーパーが相手となれば、その難易度は極めて高いでしょう。

ですが、今回はそれでもゴールが生まれました。

それは、杉本選手が「股抜きシュート」(言い換えるならば、あえてディフェンスが前にいる状態でのシュート)を最後に決断したからです。

ディフェンスがいる状態でシュート打つことは――そのディフェンスを利用して――ゴールキーパーのタイミングをずらしたり、またはブラインドを生み出したりすることがあり、結果的にゴールに結びつくものですが、その感覚はFWであれば特に持っているものだと思います。

つまり、今回の決断とゴールは、FWならではの考えによって生まれたものとも言えるかもしれません。

少し話題を変えますが、僕はこのような質問をよく受けます。

「シュートが下手なんで、ゴールを決める秘訣を教えてもらえませんか?」

そして、僕はいつもこう言います。「フットサルをプレーして下さい」と。

ゴールを決める秘訣は、リアリティーのある局面でシュートの成功体験と失敗体験をどれだけ行ってきたかであり、その数が重要です。

言い換えるならば、幼少期から現在に至るまで、どれだけシュートを打って成功したり、失敗したりしてきたかにかかってきます。

ちなみに、「杉本選手がフットサルをしていた」という話を僕は聞いたことはありません。

「なら、フットサルをしなくていいじゃないか?」

そう思われる方もいらっしゃると思いますが、それは違います。

杉本選手はFWだったから、蓄積してきたシュート体験が多いだけです。それは僕も弟も同じです。

世界に目を向けてみてください。

サッカーのみならずフットサルの先進国である南米のブラジルや欧州のスペインの選手たちは、MFでもDFもゴールを決めていませんか?

フットサルからどれだけの影響を得たかは選手によってまちまちでしょうが、少なからずフットサルからインスパイアされたものがあると思います。

また、フットサルから様々なものを得られるということも紛れもない事実でしょう。

得られるものは本当に多種多様で、テクニックや判断や決断力、ボールがないところの動き、ディフェンス能力、トランジション能力、敏捷性…などなど多くありますが、特に僕が強く思うのはシュートの部分です。

サッカーでは、一試合してもシュートを一本も打たずに終わる試合や練習が多々あります。

ですが、フットサルではそれは皆無です。

サッカーの約1/8サイズのコートで5対5で試合を行うわけですから、必ずどこかでシュートシーンは訪れます。

その分、ゴールのサイズも小さく、サッカーよりもゴールすることは難しくなりますが、今回お伝えした三つのポイントもたくさん試すことができるわけです。

「シュートは必ずゴールしなくてはならないものだ」と考えて悩んでいる人は一度立ち止まってみてください。

シュートは成功失敗体験を増やすことにより、その確率を少しずつ上げていけば良いのです。

そして、その練習舞台に、フットサルを選んでみてはいかがでしょうか?

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