元祖「独立の星」に続け、背番号「61」を受け継いだロッテ三家の可能性

ロッテ・三家和真【写真提供:千葉ロッテマリーンズ】

広島と育成契約も2年で戦力外、独立Lを経て再びNPBへ

 近年は、独立リーグの選手がドラフト指名を受け、NPB入りを果たすケースが増えている。今年のドラフト会議において、BCリーグの石川ミリオンスターズから寺田光輝投手(横浜DeNA6位)、寺岡寛治投手(楽天7位)、沼田拓巳投手(東京ヤクルト8位)が指名されたが、同一チームから3人の選手が支配下指名を受けるのは、独立リーグ史上初の快挙だった。

 千葉ロッテの三家和真外野手も、その石川ミリオンスターズからNPBまで駆け上がった「独立の星」の1人である。ただ、三家の場合は、過酷な独立リーグから日本プロ野球最高峰の舞台に「舞い戻ってきた」という方が正しい。

 1993年生まれの24歳。市立和歌山高校出身。三家の野球人生は波乱万丈だった。2011年のドラフトで広島から育成4巡目指名を受けたが、怪我もあって2年目に早くも戦力外通告を受ける。12球団合同トライアウトに参加するもオファーがなく、その後は3年間、独立のBCリーグに身を置いた。

 独立リーグでプレーする選手の月給は15万円前後と言われ、シーズンとキャンプ期間以外は無給だ。シーズンオフの4か月は、アルバイトで生活費を捻出しなければ立ち行かない。三家もゲーム会社で働きながら、1年1年を必死に食いつないだと言う。それも大好きな野球を続けるため。そしてその不断の努力が実り、昨季オフに千葉ロッテの入団テストに合格。4年ぶりにNPBの舞台に舞い戻り、野球人生の再スタートを切った。

 千葉ロッテの一員となり、4年越しとなる初の1軍昇格を果たしたのは今年5月21日。同23日の福岡ソフトバンク戦、5点ビハインドで迎えた最終回の代打として、待望の1軍デビューを飾った。結果は三ゴロに終わってしまったものの、公式サイトのプロフィール欄に「泥臭く、がむしゃらにガッツを出して頑張ります」と記していた通り、まるで高校野球のラストバッターのようなヘッドスライディングも見せた。

念願の1軍出場もプロ初安打はお預け

 その後はスタメン起用も経験し、1軍で4試合に出場。プロ初安打は放てないまま、5打数無安打でシーズンを終えてしまったが、イースタン・リーグでは107試合に出場。82安打2本塁打28打点、リーグ9位の打率.262という成績を残した。

 そんな三家の特技は「他の選手の打撃フォームの真似」。球界でも珍しいスイッチヒッターであり、内外野をこなせるユーティリティでもあるが、そのプレースタイルも再現性が求められる「物真似」を得意とする器用さからきているのだろう。スイッチヒッターを選択する多くの例にもれず俊足でもあり、肩の強さは誰にも負けないと自負する。実質1年目のまだ24歳でありながら、あらゆる意味で厳しい現実を生き抜き、わずかなチャンスを手繰り寄せたことを思えば、三家の可能性に大きな期待を抱かずにはいられない。

 千葉ロッテには、独立リーグ出身の外野手で、今やリーグを代表する打者へと成長した角中が在籍している。三家の背番号「61」は、かつてその角中選手がつけていたもの。偉大な先達に続いて、NPBを目指す独立リーガーに希望を与える存在となれるのか。前述した石川ミリオンスターズの快挙などによって、これから一層存在感を増すかもしれない独立リーグを背負う若き苦労人・三家に注目していきたい。

(Full-Count編集部)

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