丸一鋼管、建築・車向け需要増で北米事業を強化 各拠点で倉庫・工場など新増設

 丸一鋼管は、米国とメキシコの北米鋼管事業を強化する。米西海岸の建築需要増に対応してロサンゼルスのMAC社(マルイチ・アメリカン、社長・森田渉氏)が製品倉庫を新設して出荷品質の向上を図る。角形鋼管のオレゴン州ポートランドのMOST社(マルイチ・オレゴン・スチール・チューブ、社長・同)も第2工場(小径角形鋼管)を建設。メキシコでは日系自動車の増産に対応して自動車用鋼管のMMX社(マルイチ・メックス、社長・北川章三氏)が工場を増設。鋼管精密加工のグループ子会社AMX社(アルファ・メックス、社長・添田篤靖氏)も加工能力を増やす。トランプ政権の保護貿易策・雇用拡大策などに連動して米国内の鋼材需要が上向く見通しだ。

 丸一鋼管の北米鋼管事業は、米国がロサンゼルスのMAC社、オレゴン州ポートランドのMOST社と、シカゴのLEAVITT社(マルイチ・レービット・パイプ&チューブ、社長・松本光史氏)の3社。

 西海岸にあるMAC社とMOST社は建設向け鋼管が主体。シカゴのLEAVITT社は建設向けに加え、自動車用鋼管にも対応。さらにエネルギー向けとして米国石油協会(API)規格を取得。石油やシェールガス向け鋼管を生産している。

 メキシコは、中西部アグアスカリエンテス州のMMX社とグループ子会社で鋼管精密加工のAMX社の2社。

 「北米事業はいずれも需要地立地。米西海岸は主に建設需要に対応。メキシコは自動車向け。シカゴは建設と自動車・石油関連需要に対応している。NAFTA問題などあるが、北米の鋼材需要は建設、自動車など増加傾向。生産や在庫能力を拡充して今後の需要増を捕捉していく」と丸一鋼管の鈴木博之会長兼CEOは話す。

 ロサンゼルスのMAC社は、来年2月の完成予定で、敷地内に製品倉庫を新設する。屋外に出荷待ち在庫してきた一部の製品を含めてすべて屋内で保管する。建屋5千平方メートル、在庫能力5千トン。8・2トンの天井走行クレーンを設置する。

 ロサンゼルスでは2028年のオリンピック開催が決定。交通インフラ整備などが増える。また販売先の「問屋」がコスト対策から在庫低減化を進めている。出荷待ち在庫を屋内保管することで販売先に高品質の製品を納入して品質面で差別化を図る。

 MAC社は1978年設立。約8万8千平方メートルの敷地に工場3棟がある。設備は鋼管ライン5基(小径ミル3基、中径ミル1基、大径ミル1基)と、母材の鋼板コイルを切断するスリッター2基など。16年12月期で6万9千トンを生産販売。今期は6万6千トンの生産販売を計画している。

 北部オレゴン州のMOST社は、工場・倉庫向けなどの角形鋼管専門工場。販売先はオレゴンやワシントン州、カナダのバンクーバーやカルガリー周辺など。

 この数年、需要家から小径角管への要望が増加しており、ロサンゼルスのMAC社が対応してきたが、MOST社の対応に切り替える。

 総工費750万ドルで来年4月に第2工場を完成させ、10月に2インチ造管ミルを導入して小径角管を生産開始する。

 MOST社は、15年に同じポートランド市近郊にあるロシア系鋼板単圧メーカー、エブラツ社(旧オレゴン・スチール)の鋼管工場を買収して設立。12インチ造管ミルで60ミリ角から250ミリ角の角管を月4千トン生産している。前期は4万トンを生産。今期は4万5千トンの計画。

 自動車用鋼管のメキシコ・MMX社は、増産ネックになっている鋼管切断能力を増強する。切断専門工場を立ち上げて生産の整流化を図り、日系自動車の増産計画に対応する。

 9月に隣接地1万平方メートルを取得し、早期に建屋を建設。現工場の切断設備を集約・増強して鋼管切断工場にする。

 MMX社は、2インチ造管ミル2基と0・5インチ造管ミル1基、鋼管切断機14台などを設置して月800~900トンの車用鋼管を生産している。前期生産量は9千トン。今期は1万500トンの計画。

 生産された自動車用鋼管はユニプレスなど部品加工会社を通じて日産やホンダなど日系自動車に納入される。

 鋼管精密加工のAMX社もプレス、ベンダー、拡管・縮管機、穴あけなど現有設備の効率運用を進め、月4万本の加工量を来年から5万5千本に約40%引き上げる。

 メキシコでは、NAFTA協定を米国が見直す意向を示すなど経済の先行きに不安要因が出ているが、一方で日系自動車などの生産意欲は旺盛で、丸一鋼管も「当面は自動車の増産基調が続く見通し」としている。(小林 利雄)

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