共栄鋼材、アンコイラーでの労災撲滅 カメラ導入で遠隔操作

 中部地区大手コイルセンターの共栄鋼材(営業本部・岐阜県可児市、社長・古銭博之氏)は、鋼板コイル加工の入側(アンコイラー)での人災等を撲滅する安全対策を考案した。母材をセットする際の人による目視作業をカメラに置き換え、遠隔操作でスムーズに業務を遂行できる体制にした。安価な設備費用で安全性が大きく向上し生産性を落とさない災害対策として、話題を呼びそうだ。

 同社は厚物の鋼板コイル加工に強みを持ち、極厚スリッターラインによるハイテン鋼加工も得意。特殊鋼(みがき・冷延・熱延・焼入鋼・ベーナイト・ステンレス鋼)および普通鋼(冷延・熱延・表面処理鋼板など)の鋼板を扱う。

 江南、可児の2工場体制で、現在、月間加工量は約1万3千トン(スケール除去付を含むスリッター・レベラー加工)。タイにも進出している。自動車関連が扱いの90%。

 安全対策を導入したのは、可児工場の9号スリッターライン(板厚最大10ミリ、板幅最大1250ミリ)。

 アンコイラー部は、重量のある母材コイルを太い棒状の突起に差し込み、コイルをほどきながら鋼板をラインに送る。セット時には、アタッチメントの状況なども確認しつつ、母材中心の空洞を正確に突起部に合わせる必要がある。通常は作業者が母材に近づき目視で位置決めする。

 このため、セッティングに不備があれば突起部に押されて母材コイルが傾き、作業者に向かってくることになるが、避難スペースの確保もしにくく、作業者が重篤災害に巻き込まれる可能性もある。

 同社では、現場を担当する製造部の纐纈雄也氏がアイディアを出し、コイルストッカー横に自在に動けるカメラ移動装置を新設。操作パネル周辺に設置したモニターを通して、母材コイルに近づくことなく、ペンダントの操作ボタンで位置決めできる体制にした。作業効率も向上する。

 入側のスペース確保が若干必要になるが、今後業界内に普及する可能性もある。

 古銭社長は「人員の配置などのマニュアル作成も重要だが、そもそも作業者が近づかない体制とするにはどうしたらいいかを検討した結果。重量物を扱うコイルセンター業の災害撲滅に少しでも役立てばよい」と話す。

 また、システム全般を手掛ける本田隆業務部部長は「作業者の高齢化、新人による作業などさまざまな条件でも、簡単な操作手順で作業者の安全を確保できる対策として使っていきたい」としている。

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