次なる“育成の星”になれるか 今季支配下を勝ち取った育成選手たち

広島のサビエル・バティスタ【写真:荒川祐史】

ホークス千賀、甲斐らが育成から躍進、次なる“育成の星”は?

 ソフトバンクが2年ぶりの日本一に輝き、幕を閉じた2017年のプロ野球。セ・リーグは広島が首位を独走して連覇を達成したものの、クライマックスシリーズは3位のDeNAが阪神、広島を次々に打ち破って日本シリーズに進出した。

 パ・リーグはソフトバンクがリーグの頂点を奪還。8月上旬までは楽天が首位を走ってきたが、勝負の夏場に地力を発揮し、一気に突き放した。終わってみれば、独走でのリーグ制覇であった。DeNAとの日本シリーズは、ソフトバンクが初戦から3連勝で一気に王手をかけ、2連敗のあとの第6戦で勝利して4勝2敗で日本一の座を掴んだ。

 そのソフトバンクは今季、侍ジャパンメンバーとしてWBCにも出場した千賀滉大をはじめ、今季急成長し主力捕手となった甲斐拓也や一時ローテを担った石川柊太、そしてキューバ代表としてWBCに出場してシーズン中に加入したリバン・モイネロと、入団当初は育成選手契約だった面々がチームを支えた。

 今や、育成から支配下となり、1軍の舞台で活躍することも決して珍しくはなくなってきた。今季もソフトバンクだけでなく、複数の球団で育成から支配下への“昇格”があり、1軍の舞台に立った選手もいた。その一方で支配下となりながらも、オフになって戦力外通告を受けた選手もいる。育成から一流選手への仲間入りを果たす“育成ドリーム”。ここでは、今季の春季キャンプスタート後にアピールが実り、その第1歩となる支配下契約を勝ち取った選手と今季の成績を見ていきたい。

広島バティスタはデビューから2打席連発、巨人・篠原は1軍初登板で初勝利

○曽根海成(ソフトバンク)
1軍:2試合3打数0安打0本塁打0打点 打率.000
2軍:112試合334打数70安打1本塁打30打点 打率.210

 2013年の育成ドラフト3位で京都国際高からソフトバンク入団。育成選手ながら、今春キャンプでA組に抜擢され、オープン戦も1軍に帯同。高い守備力と走力を評価され、開幕前に支配下契約を勝ち取った。フレッシュオールスターでMVPを獲得。7月27日の楽天戦で1軍デビュー。同29日の日本ハム戦で初先発。

○今野龍太(楽天)
1軍:1試合0勝0敗0ホールド0セーブ 防御率27.00
2軍:17試合1勝0敗3セーブ 防御率1.71

 2013年のドラフト9位で岩出山高から楽天入り。プロ入り当初は支配下契約だったが、2年目の2015年10月に右膝半月板の縫合手術を受けたため、育成契約となった。今季オープン戦で好投すると、開幕直後に支配下契約へ復帰。4月12日の西武戦で2年ぶりに1軍で登板した。

○篠原慎平(巨人)
1軍:23試合1勝1敗1ホールド0セーブ 防御率3.62
2軍:28試合1勝0敗6セーブ 防御率1.45

 2014年の育成ドラフト1位で四国アイランドリーグplusの香川から巨人へ。2016年にイースタンリーグで好投を続けると、台湾で行われたアジアウインターリーグにも参加し、13回20奪三振を記録。今季もオープン戦、そしてイースタンリーグで好投を続け、4月16日に支配下契約を結んだ。4月19日のヤクルト戦で初登板。高木勇人の負傷降板による緊急登板だったが、3回無失点の好投で、デビュー戦で初勝利。今季23試合に登板した。

○サビエル・バティスタ(広島)
61試合125打数32安打11本塁打26打点 打率.256
48試合177打数65安打21本塁打49打点 打率.367

 今季、球界に衝撃を与えた1人だった。ドミニカのカープアカデミーから2016年に育成選手として広島入り。1年目の2016年はウエスタンリーグ68試合で打率.243、6本塁打19打点の成績だった。迎えた今季、開幕からウエスタンリーグで打ちまくり、6月2日に6年の長期に及ぶ支配下契約を締結。同3日のロッテ戦に代打でデビューを果たすと、初打席初本塁打をマーク。同じく代打で登場した翌日の同戦でも代打本塁打を放ち、1軍初打席から2打席連続本塁打という偉業を達成した。守備面の不安などもあったが、2桁11本塁打を記録。1軍でも、2軍でも安打の約3分の1が本塁打という驚異の破壊力を示した。

西武・木村昇、中日・岩崎らベテラン組はオフに戦力外に…

○木村昇吾(西武)
1軍:3試合6打数1安打0本塁打0打点 打率.167
2軍:78試合199打数48安打1本塁打9打点 打率.241

 2002年に愛知学院大から、ドラフト11位で横浜に入団。2007年オフにトレードで広島へ。2011年には遊撃手のスタメン起用が増えたが、2012年からは再び控えに。2015年オフに海外FA権を行使したが、移籍先が決まらず、春季キャンプでの入団テストを経て西武に入団。2016年途中には右膝の前十字靭帯を断裂し、そのオフに戦力外通告を受けて、育成契約で再契約していた。負傷も癒えた6月8日に再び支配下に復帰。だが、3試合出場のみに終わった今オフに、再び戦力外通告を受けた。

○リバン・モイネロ(ソフトバンク)
1軍:34試合4勝3敗15ホールド1セーブ 防御率2.52
2軍:3試合0勝0敗1セーブ 防御率0.00

 今春WBCのキューバ代表。5月10日に育成選手としての契約が決まり、同23日に入団会見を行なった。その後3軍戦、2軍戦で立て続けに好投し、入団から1か月経たずして支配下契約に。交流戦明けに1軍デビューを果たすと、そこから勝利の方程式を担うまでにジャンプアップ。34試合に投げ、終わってみれば、日本一となったソフトバンクに欠かすことの出来ない投手となっていた。

○西田直斗(阪神)
1軍:出場無し
2軍:69試合137打数30安打1本塁打17打点 打率.219

 2011年のドラフト3位で大阪桐蔭高から阪神に入団した西田。1軍出場は2013年の1試合2打席のみ。2016年も1軍出場無しに終わり、オフに戦力外通告を受けて育成選手として再契約を結んでいた。今季は6月17日に支配下登録に復帰したものの、1軍出場はなかった。

○岩崎達郎(中日)
1軍:1試合1打数0安打0本塁打0打点 打率.000
2軍:54試合133打数30安打0本塁打13打点 打率.226

 新日本石油ENEOSから2006年の大学生・社会人ドラフト5位で中日へ。2013年にトレードで楽天へ移籍し、2016年オフに戦力外となった。その年の秋季キャンプで入団テストを受け、育成選手として中日に復帰することが決定。シーズン中の7月10日支配下にも復帰を果たしたが、1試合出場に終わり、オフに再び戦力外となった。

メヒアはウエスタンリーグ首位打者、巨人の3野手は1軍出場なし

○アレハンドロ・メヒア(広島)
1軍:9試合14打数3安打0本塁打1打点 打率.214
2軍:104試合402打数133安打18本塁打77打点 打率.331

 ドミニカのカープアカデミー出身。2016年に前述のバティスタとともに広島に育成選手として入団。1年目はウエスタンリーグで189打数49安打7本塁打25打点の成績だったが、今季は成長を示して7月20日に支配下契約を勝ち取った。1軍出場は9試合にとどまったものの、ウエスタンリーグの首位打者に輝いており、来季の飛躍が楽しみな存在だ。

○増田大輝(巨人)
1軍:出場無し
2軍:51試合130打数40安打1本塁打18打点 打率.308

 小松島高から近大に進むも、中退。その後鳶職に就いたが、トライアウトを経て四国アイランドリーグplusの徳島へ。2015年の育成ドラフト1位で巨人に指名された。今季はオープン戦でも起用されるなど期待され、7月28日には支配下契約へと変更された。今季イースタンリーグで打率.308を記録している。

○青山誠(巨人)
1軍:出場無し
2軍:44試合96打数26安打4本塁打15打点 打率.271

 育英高から日本大を経て、2013年の育成ドラフト1位で巨人へ。4年目の今季は3軍戦で59試合に出場して打率.321、9本塁打と持ち前の打力を発揮し、イースタンリーグでも44試合に出場している。支配下登録期限の迫る7月28日に支配下契約へ変更となったものの、1軍での出場はなかった。

○田中貴也(巨人)
1軍:出場なし
2軍:66試合136打数34安打0本塁打11打点 打率.250

 八重山商工高から山梨学院大を経て、2014年育成ドラフト3位で巨人へ入団。3年目の今季は1軍キャンプに参加し、オープン戦でも6試合に出場した。登録期限ギリギリの7月31日に支配下登録を勝ち取った。1軍出場は無かったものの、現在、台湾で開催中のアジアウインターリーグにイースタン選抜で参加している。

楽天は宋がクライマックスシリーズで活躍

○宋家豪(楽天)
1軍:5試合0勝0敗3ホールド0セーブ 防御率3.86
2軍:33試合8勝2敗5セーブ 防御率4.28

 台湾の国立体育大学から2016年に楽天入り。1年目はイースタンリーグで15試合6勝3敗0セーブ、防御率2.44の好成績をマーク。今季はチャイニーズ・タイペイ代表としてWBCに参戦し、イースタンリーグでも好投を続けて7月31日に支配下契約となった。8月にデビューを果たすと、クライマックスシリーズでもメンバー入り。来季の契約合意しており、活躍が期待されている。

○八百板卓丸(楽天)
1軍:出場無し
2軍:105試合363打数102安打5本塁打40打点 打率.281

 聖光学院高から2014年の育成ドラフト1位で楽天入り。昨季はイースタンリーグで168打数44安打2本塁打19打点の成績をマーク。今季は昨季を上回る成績を残して、登録期限ギリギリの7月31日に支配下契約を勝ち取った。1軍出場はなかったものの、ファームで打率.281と上々の成績を残した。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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