金属行人(12月1日付)

 近年のマラソンブームも手伝ってか、就業時間後に皇居をランニングする鉄鋼マンにしばしば出くわす。いざ走りだすと程よい気候で、色づく木々のライトアップは目にも鮮やか。周囲には今なおシャワー施設が増えており、必要なアイテムをすべて借りられる気軽さもありがたい▼コースを共にした有志たちとの打ち上げも楽しみの一つ。むしろそちらがメーンというランナーも少なくない。もっとも、どのグループに参加しても部署や肩書きの垣根を越えた一体感を覚える。1周5キロの道中は起伏あり、道幅の広狭あり。職場の話題も交えつつランニング談議に花が咲く▼大なり小なり苦楽を分かち合った間柄だからこその息づかい。押し付けではない言葉のキャッチボールは傍らで見ていてすがすがしい。どんなに技術が進歩し、通信手段が多様化しようとも、顔と顔を合わせてのコミュニケーションには勝るまい▼もちろんランニングはきっかけの一つ。どうにかその日の業務にめどを付け、輪に加わろうという意識や姿勢あってのもの。一人では重い腰も、同じ志を持つ仲間の存在が出走を後押ししてくれる。個人競技でありながら、自然とチームワークも培われているのかもしれない。

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