【解説】〈阪和興業・ジャパンライフを子会社化〉条鋼・建材事業と特殊金具、内外でシナジー拡大狙う

 ジャパンライフは、コンクリート製品を効率的に接合・運搬・固定するための特殊金具「インサート」製造の最大手。特に土木向けではシェアが5割以上とされる。取引先は国内の鉄道各社や道路各社、建設など大手インフラ会社との関係が深く、内外の道路建設や鉄道建設、空港建設や地下鉄など大型案件への実績も多い。数多くの実績から取引先の設計部門などと密接なコネクションを持っていることが強みだ。

 阪和興業としては、この関係性を最大限に活用する。計画案件の情報を迅速にキャッチアップするとともに、線材特殊鋼のコンクリート製品の金具だけではなく、メーンの部材となるセグメント向けなどのH形鋼やコラム、鉄筋といった条鋼・建材の商機につなげたい考えだ。

 条鋼・建材との相乗効果は国内だけにとどまらない。ジャパンライフは海外でも中国、韓国に5拠点を構えている。国内の大型案件とともに、海外のインフラ案件についても、阪和興業の持つ海外ネットワークを活用して商機の拡大が見込めそうだ。

 またジャパンライフが持つ〝商品開発力〟も有望だ。ジャパンライフは開発部門を持っており、自社開発製品の比率や特許数も同業他社を圧倒するとされる。阪和興業としては、豊富に蓄積されたジャパンライフの開発技術力を活用して、線材特殊鋼のインサート製品だけでなく、条鋼・建材など他の鋼材分野でも、付属部材を新たに開発することが今後は可能となる。

 今回のM&Aは、阪和興業の「そこか」戦略の中で、「か(加工)」に当たるものの、「開発」の「か」としての意味合いも大きい。阪和興業としてはこの先、国内の土木需要の本格化、海外の大型プロジェクトを直前に控えた順風を受けて、今回のジャパンライフの子会社化を大きな船出として、土木・建築市場で存在感を高めたい狙いだ。

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