「希望は捨てない」被爆体験者第1陣、敗訴へ

 被爆体験者が被爆者健康手帳の交付などを求めた第1陣訴訟は30日、原告1人を除く387人の敗訴が確定する見通しとなった。「本当に悔しい」「まだ希望は捨てていない」。原告たちは落胆しながらも、わずかな可能性に望みを託した。

 この日、原告1人を対象とした上告審弁論を傍聴した原告団長の岩永千代子さん(81)は、残る387人の弁論は開かれないことを知り、「原告勝利は厳しい状況」と声を落とした。ただ「弁論が開かれたことに意味があり、勝利の可能性は残されていると信じている。ここまできたら逆転勝利を期待して、判決を待ちたい」と前を向いた。

 判決期日が決まったことを自宅で知った原告の1人、中村榮さん(82)は「提訴から10年間、私たちを被爆者と認めてほしいと一生懸命頑張ってきた。すごく長かったし、多くの仲間が亡くなった。敗訴となれば、本当に残念で悔しい」と肩を落とした。

 原告弁護団の三宅敬英弁護士は「上告が受理され、1人だが、弁論は開かれた。まだ首の皮1枚でつながっている」と強調。敗訴したとしても「どういう理由で負けるのかにより、第2陣訴訟にも影響を与える可能性がある。判決理由も注視したい」と述べた。

 別の原告161人による第2陣訴訟では、昨年2月の一審長崎地裁判決で、原爆投下による年間積算被ばく線量25ミリシーベルト以上と推計される原告10人を被爆者と認定。敗訴した原告151人と県、市はいずれも控訴し、現在も福岡高裁で審理が続いている。第2陣の原告団長、山内武さん(74)は「1陣の判決日が決まった以上はそれを待つしかない。完全敗訴ということは考えていない。希望を持ちたい」と話した。

弁論終了後、最高裁前で横断幕を掲げる原告団長の岩永千代子さん(右端)ら=30日午前

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