【日本ガイシ・金属事業部の戦略】〈加藤明事業部長に聞く〉ベリリウム銅、生産3割増目指す 工程見直し、データ活用で効率化

 主力のベリリウム銅製品に加え、新たな戦略製品に位置付ける新合金の開発、量産に向けた取り組みを加速する日本ガイシ・金属事業部。一部新合金製品の量産がスタートする一方、ベリリウム銅需要の高まりに伴い生産体制を再構築する必要も生じ始めた。海外事業も並行し採用拡大に努める中、今後どのような戦略を展開して需要を捕捉するとともに、供給責任を果たし続けるのか。加藤明事業部長に現状と展望を聞いた。(佐野 雄紀)

――足元のベリリウム銅需要をどう見るか。

 「長らく数量が伸び悩んでいたが、昨年秋を境に受注が拡大した。例年需要が一服する下期も前年は落ち込むことなく、これまで1年以上好調を維持している。今年度上期生産は前年比2割増の2700トン程度まで伸長する見通しだ」

日本ガイシ金属事業部・加藤事業部長

 「地域別では、家電や産業機器、インフラ関連で旺盛な引き合いがある中国の需要水準が高く、国内向けでも自動車向けコネクタ類が底堅い。スマホ関連など低調な分野もあるが、現在フル生産が継続し注残が発生している」

――ニーズに応じたタイムリーな供給が不可欠となる。

 「『新・ものづくり構造革新』を旗印に生産合理化、工程改善に取り組んでおり、各工程の生産状況のデータを収集、蓄積し解析する体制を整備。品質維持、効率アップにつなげている。しかし実需が拡大する中、一歩踏み込んだ改革を断行して能力の上方弾力性を確保することが急務だ」

 「そこで今期から工程の見直し、リフォームを通じた能力増強を重点項目に設定した。収集したデータを活用、低投資での改善活動を継続し、生産能力を2019年度までに現在比3割増としたい。同時に検証、実験を重ね、新たな技術や工程を確立したいと考えている」

――新合金について伺いたい。ニッケル錫銅合金板条の開発、生産状況は。

 「昨秋から時計用精密部品向けで製品出荷を開始し、需要家の認証が得られたことから今上期から量産体制に移行した。他分野向けでの営業生産も始まり、自動車ユーザーの評価も進んでいるため、17年暦年で150トン程度の出荷数量となる見通し。引き続きこれまでの目標、20年出荷量500トンを目指す」

 「ただ同製品は耐熱、耐食性など多くの優れた特性を持ちながら、曲げ加工性が十分でない。さらなる採用拡大に向けて加工性を高めた製品開発にも注力しており、今下期のサンプル品供給スタート、来年からの拡販も視野に入った」

――銅・ジルコニウム合金線はどうか。

 「ジルコニウムの含有量により3製品をラインアップするが、高ジルコニウム線は強度が高く量産が難しいのが現状だ。今年改めて低・中含有品づくりに特化し、量産技術をしっかり確立するとともにマーケティングを継続。サンプル出荷を行いながら、事業化に向けた取り組みを着実に進める」

――海外事業も積極展開している。中国・深せんの営業拠点の現況は。

 「今春成分分析器を導入し、測定装置を10種類に拡充して材料解析機能を強化した。現地で開発を進める需要家に対して、より迅速な解析サービスの提供を通じて数量拡大を図りたい。中国版LINE『We Chat』のフォロワー数も前年比で倍増しており、今後も技術情報の発信を積極化して需要深耕を進める方針だ」

――15年に現地法人化したインド拠点はどうか。

 「ユーザーの現地調達化が進んでいるものの、需要拡大のピッチは依然鈍い。従来から受注の間口拡大に努める中、このほど現地流通と協業してベリリウム銅・広幅コイル製品の在庫販売を開始した。リードタイムを大きく短縮し利便性向上を図った結果、徐々に販売数量が上向くなど効果が表れている」

――通期のベリリウム銅出荷見通しは。

 「下期は実需そのものが落ち込む傾向にあり数量が伸び悩みそうだが、上期の好調により前年度比1割増となる5千トンレベルに達しそう。生産性向上に努めながら、今後も段階的に数量を拡大したい」

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